遅い春、42歳で一人娘の父親に…密かに抱えた不安と焦り
晩婚化や出産年齢の高齢化が進んでいる昨今、30代後半や40代で結婚・出産を迎える人も少なくありません。ライフスタイルが多様化した現代では、結婚も出産も「昔より10年遅い」のが一般的になりつつあるのです。
その裏で、晩婚・晩産化によって教育費と老後資金づくりの時期が重なり、家計が行き詰まるケースも増加。綿密な計画を立てずに、「長い独身時代に貯めたお金がある」という余裕から老後の危機を迎えることもあります。
中村誠さん(仮名・60歳)も、そんな一人でした。
中村さんが5歳年下の理恵子さんと出会ったのは40歳のとき。長年営業職として働き、仕事中心で生きてきた中での恋愛。結婚したときには「遅かったけれど、ようやく自分にも家庭ができた」と幸せをかみしめたといいます。
そして、42歳の時に娘が誕生しました。「この年で父親になれるとは思わなかった。人生にこんな喜びがあったのか」と涙が出るほど嬉しかったと振り返ります。
しかし喜びの裏側には、年齢ゆえの不安や焦りもありました。とくに心に残っているのが、娘の幼稚園の運動会。グラウンドに立つと、まわりの父親の多くは自分よりはるかに若く、体力も見た目も軽やかでした。
娘の顔を見ると、楽しそうにはしゃいでいました。しかし、不安が胸をよぎります。
「年を取った父親で、娘が嫌な思いをしないだろうか」
「若い父親たちに負けたくない。娘に誇れる父でいたい」
年を重ねているからこそ、頼れる父親であるべきだという思い。そして、当時、独身時代に貯めた貯金が約1,400万円、年収は1,000万円あり、若い時にはなかった経済的余裕があったことも重なり、中村さんは娘に惜しみなくお金を使うようになっていきました。
