年金「月21万円あれば安心」は本当か
厚生労働省『2023(令和5)年 国民生活基礎調査』によると、世帯所得の中央値は405万円。「100~200万円未満」が14.6%、「200~300万円未満」が14.5%と、300万円未満の世帯が多数派となっており、平均所得524万2,000円を下回る世帯は全体の62.2%にのぼります。
中でも高齢者世帯に注目すると、厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、80~84歳の厚生年金受給者は平均月15万5,635円、国民年金は月5万7,045円。85~89歳になると、厚生年金は月16万2,348円、国民年金は5万7,336円となっています。
サラリーマンとして定年まで勤めた方であれば、年金はおおよそ月21万円ほど。ただしこれは、あくまで「現役時代の納付状況が良好だった場合」に限られます。持ち家があり、住宅ローンも完済済みであれば、安心感はあるかもしれません。しかし実際には、医療費・介護費用といった「老後特有の支出」がじわじわと重くのしかかります。
老人ホーム入居に「年間50万円の持ち出し」も
いずれは介護施設への入居を、と考えている方も多いかもしれません。なかでも「特別養護老人ホーム(特養)」は、費用が比較的抑えられる施設として知られていますが、それでも費用負担は軽くありません。
“介護施設の中でも、とくに安く入所できるといわれる特別養護老人ホーム(特養)の場合、利用料金は入所者本人の要介護度と所得によって決まります。 親が一般的な会社員で定年まで勤め上げ、平均的な額の厚生年金を受給している場合で、要介護3になり特別養護老人ホームへ入所したとすると、ユニット型個室利用で月額18万円程度の費用がかかります。厚生年金の平均受給額は14万円程度であるため、年金以外に年間約50万円程度の負担が必要です。” 『人生を破滅に導く「介護破産」』
これはあくまで月額費用だけの話です。実際には、入居一時金、生活用品、理美容代、医療費などの「別途負担」が発生します。十分な貯蓄があれば対応できますが、年金納付期間に空白がある方や、もともと収入が少なかった方には厳しい数字です。
