異例の長期化を見せる米ドル安要因の鈍反応。総裁選&日米金融政策発表でどう動くのか? 今週の米ドル/円予想レンジは〈145~149円〉【国際金融アナリストが解説】

9月16日~9月22日の「FX投資戦略」ポイント

異例の長期化を見せる米ドル安要因の鈍反応。総裁選&日米金融政策発表でどう動くのか? 今週の米ドル/円予想レンジは〈145~149円〉【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週7日、石破総理の退陣表明を受け、来月4日に自民党総裁選挙が行われることが決定しました。147円前後の小動きがすでに1ヵ月以上続くなか、今後どのような変化が予想されるのでしょうか。本記事では、マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が、先週の米ドル相場を振り返りながら、今週の市場展開について解説します。

9月16日~9月22日の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・米ドル/円は146円半ば~148円半ばといったたった2円のレンジ中心の小動きがすでに1ヵ月以上続いた。

・小動き長期化の主因は、日米金利差縮小などの米ドル安要因に対する鈍い反応。今週は日米金融政策発表など重要イベントを受けて、この鈍い米ドル安反応が変わるかに注目。

・今週の米ドル/円予想レンジは145~149円。

先週の振り返り=すでに1ヵ月以上も続く147円前後の小動き

日米の金利差の縮小など米ドル安要因に鈍い反応変わらず

先週の米ドル/円は、147円台を中心に方向感を欠く展開が続きました。これにより146円半ば~148円半ばをコアレンジとした小動きは、すでに1ヵ月以上も続くところとなっています(図表1参照)。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表1]米ドル/円の日足チャート(2025年6月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

こんなふうに小動きが続いているのは、日米の金利差(米ドル優位・円劣位)縮小などの米ドル安・円高要因への反応が鈍いことの影響が大きいでしょう。先週は、CPI(消費者物価指数)など米国のインフレ指標の発表がほぼ予想通りの結果となったことから、米利下げ再開見通しの障害にならないとして米金利は低下、日米の金利差は縮小しました。しかし、それに対する米ドル安・円高の反応は限られたものにとどまりました(図表2参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年7月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

日米2年債利回り差は、おもに米利下げ再開の可能性を織り込むなかで8月以降比較的大きく縮小しました。8月までの金利差との関係を前提にすると、米ドル/円は145円を割れるまで下落してもおかしくなかったでしょう。ではなぜそうならず、米ドル安・円高要因への反応が鈍い状況が続いたのでしょうか。

 

異例なほど長期化する金利差への米ドル/円の鈍い反応

たとえば、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジションを円とユーロの2通貨を対象とした結果で見ると、先週の段階で売り越しが20万枚以上と過去最高規模になっています(図表3参照)。このように米ドルが円、ユーロといった主要通貨に対して「売られすぎ」という状況がここ数ヵ月続いていることから、日米の金利差の縮小などの米ドル売り要因への反応が限られたものにとどまっている可能性はあるかもしれません。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表3]CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション=主要2通貨対象(2010年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

米ドル/円と日米の金利差の相関係数は4月以降、基本的に0.5以下の水準での推移が続いています(図表4参照)。この係数がプラス1に近づくほど、両者はほぼ同じように動いていることを示しています。このように0.5以下といった比較的低い水準での推移が数ヵ月にわたって続くのは、米ドル/円の金利差への反応が鈍い状況が異例なほど長期化しているといった意味になるでしょう。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表4]米ドル/円と日米金利差の相関係数(2022年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

このあと述べるように、今週は日米の金融政策発表が予定されています。それらをきっかけに1ヵ月以上も続いてきた小動きが終わることになるかは、まずはこの異例なまでに金利差への鈍い反応、とくに米ドル安を示唆する金利差の縮小への鈍い反応が変わるかが焦点ではないでしょうか。

今週の注目点=日米の金融政策発表、自民党総裁選関連の動き

FOMC利下げ幅は0.25%、それとも0.5%!?

今週は中央銀行の金融政策発表予定が相次ぎ予定されています。そのなかでもとくに注目されるのは、17日のFRB(米連邦準備制度理事会)、そして19日の日銀でしょう。そのほかに、英国、カナダ、ブラジルなどの金融政策発表も予定されています。

 

17日のFRBの金融政策発表では、米労働市場の急悪化の可能性などを受けて2024年12月以来の利下げ再開が確実視されています。ただ利下げ幅は0.25%と0.5%で見方が分かれています。また、次回10月以降も利下げが続くとの見方が強くなっているものの、そういったことについて今回公表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーの経済見通し「ドット・チャート」やパウエル議長の記者会見などを受けて、予想よりハト派かタカ派かが米金利と、それを受けた米ドル相場を左右することになりそうです。

 

一方、19日の日銀の金融政策発表では追加利上げは見送られるとの見方が基本のようです。ただ今後については、年内の利上げの有無について見方が割れているようなので、植田総裁の記者会見などを受けて、やはり予想よりハト派かタカ派かといった評価が、金利の動きを通じて円相場の行方を左右することになるでしょう。

 

また、石破総理の退陣表明を受けて、10月初めに自民党総裁選挙が行われる見通しとなりました。このため自民党総裁選の立候補者による金融政策や消費税減税などの財政政策への発言が為替相場へ影響する可能性も要注意でしょう。

 

今週の米ドル/円予想レンジは145~149円

今回繰り返し述べてきたように、米ドル/円は146円半ば~148円半ばというたった2円の狭いレンジを中心とした小動きがすでに1ヶ月以上も続きました。こんなふうに小動きが長く続くほど、相場のエネルギーがたまり、小動きが終わるとたまったエネルギーの発散で一方向に大きく動く可能性が高まります。では小動きはいつ終わるのか。

 

「金利差の縮小などの米ドル安要因への反応が鈍い」ことが変わらない限り、レンジ・ブレークは米ドル高方向の可能性が高いということになるでしょう。ただし日米の金利差の拡大など米ドル高の要因が出るかといえば、米労働市場急悪化の懸念などを背景とした米利下げ、日本利上げといった逆向きの金融政策などからそれも考えにくそうです。

 

以上からすると、当面のレンジ・ブレークはやはり「米ドル安要因への反応が鈍い」ことが変わることによる米ドル安・円高方向の可能性が高く、今週は日米金融政策発表などを受けてそれを試す展開を想定します。その上で今週の米ドル/円は145~149円で予想します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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