(※写真はイメージです/PIXTA)

物価高で庶民が苦しんでいる昨今。食べ放題の店は人気です。きっと「大食いの客」が詰めかけてくるはずですが、それでも利益が稼げるのでしょうか? 今回は食べ放題の店について考えてみましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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大食いの客が3,000円で「1,500円の定食×3人前」食べた場合

企業の利益は売り上げから費用を差し引いて求めます。費用は人件費、支払い金利などに分類するのが普通ですが、固定費と変動費に分類する場合もあります。固定費というのは売り上げゼロでもかかる費用で、変動費は売り上げに応じて増える費用です。レストランでいえば、店を借りる費用や人件費は固定費、材料費は変動費です。

 

1,500円の定食を出しているレストランについて考えてみましょう。固定費が10万円、1食あたりの材料費が500円だとします。客が一人も来ないと10万円の赤字ですが、客が一人来るたびに赤字が1,000円ずつ減っていきます。1,500円の収入が得られる一方でコストは500円しか増えないからです。100人客が来ると赤字が消え、その先は黒字になります。その場合、100人のことを「損益分岐点」と呼びます。

 

余談ですが、企業の売り上げが2倍になることは稀ですが、利益が2倍になることは珍しくありません。その理由は固定費と変動費の存在にあります。客が101人から102人に増えただけで、利益が1,000円から2,000円に倍増するからです。もっとも、よいことばかりではありません。客が101人から99人に減っただけで赤字に転落してしまうからです。

 

さて、大食いの客が食べ放題のレストランで3,000円払って1,500円の定食を3人前食べたとします。3,000円で4,500円分の食事ができて、客は満足ですが、レストランも満足なのです。収入が3,000円増える一方で、コストは1,500円しか増えず、利益が1,500円増えるからです。大食い客が来ても食べ放題のレストランが儲かるのは、レストランの費用に占める固定費の割合が大きく、変動費の割合が小さいからなのです。

 

客が満足することで人気店となり、空席が埋まるとすれば、それも店の利益になります。空席が1つ減れば1,500円も利益が増えるからです。

ビュッフェスタイルなら、さらにメリットあり

食べ放題のレストランの中には、真ん中のテーブルに食べ物が置いてあり、客が好きなものをとって食べる方式もあります。ビュッフェスタイルです。それだと、別のメリットもあります。

 

まず思いつくのは、客の注文を聞いて料理を作り、それを皿に盛り付けて客席に運ぶ、という手間がかからないことです。注文を聞き間違えるリスクもありません(笑)。加えて、客が入店してすぐに食べ始めることも、客席の回転率を上げるので利益につながります。すぐ食べられるというのは客にもメリットなので、人気が出て空席が減るというメリットもあるでしょう。

 

シェフの仕事という面でもメリットがあります。普通の店は注文を受けてから作るので、ランチタイムだけ猛烈に忙しく、それ以外はそうでもない、といったことが起きやすいのですが、ビュッフェスタイルだとシェフが何を作るか決めるので、朝から効率的に働くことができます。加えて、1人分作るのと20人分作るのでは、手間が20倍かかるわけではないので、作業効率もいいでしょう。

 

材料の面でのメリットもあります。普通の店では、客が何を注文するかわからないので、メニューにあるものを作るための食材をすべて仕入れておく必要があり、無駄になる材料もあるでしょう。一方、ビュッフェスタイルでは何を作るか決めてから材料を仕入れればいいので無駄がありません。加えて、「大量に仕入れるから値下げしてほしい」といった交渉も可能になるかもしれません。

念のため…客は、元を取ろうとして頑張り過ぎない

食べ放題の話のついでに、食べ放題の店に行く際の客の心得についても記しておきましょう。それは、元を取ろうと頑張らないことです。満腹なのに我慢して食べ続けている人をみかけますが、やめましょう。元をとるまで食べないと「食べ放題の店を選んだ自分が愚かだった」と思わなければならない、だから無理して食べる、というのは愚かな発想です。自分に見栄を張るために苦しい思いをする必要はありませんから。

 

入場料を払って店に入ったら、食べても食べなくても払った金は戻ってこないのですから、払った金のことは忘れて「いまから1番幸せになるには何をすればいいか」だけを考えましょう。もう1皿食べるほうが食べないより幸せだ、と思うなら食べればいいし、そうでなければ食べなければいいのです。万が一料理が口に合わなかったら、食べずに帰宅してお茶漬けを食べるほうが幸せになれるかもしれません。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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