(※写真はイメージです/PIXTA)

年金額が少ない高齢の親が一人で暮らしていると、子どもは生活費や将来の介護費を心配するものです。しかし、年金額だけでは、その人の経済状況は判断できません。預貯金のほか、不動産収入や株式の配当などを得ている場合もあります。ただし、資産からの収入には空室や価格下落といったリスクも伴います。

「月8万円で暮らせるわけがない」娘が見つけた一冊の通帳

「お母さん、毎月いくらで生活しているの?」

 

長女の智恵さん(仮名・52歳)が尋ねると、母の紀子さん(仮名・79歳)は少し考えてから答えました。

 

「年金は8万円くらいよ。それで十分」

 

紀子さんは、夫を亡くしてから10年以上、一人で暮らしています。持ち家のため家賃はかかりませんが、固定資産税や光熱費、食費は必要です。

 

それでも、古くなった給湯器を交換し、年に一度は友人と温泉旅行へ出かけています。智恵さんが食事に誘っても、母が代金を支払うことが珍しくありません。

 

「月8万円だけで、どうしてそんな生活ができるの?」

 

智恵さんが何度聞いても、紀子さんは「少し貯金があるから」と笑うだけでした。

 

ある日、紀子さんが階段で足を滑らせ、数日間だけ智恵さんの家で過ごすことになりました。大きなけがはありませんでしたが、公共料金の支払いや郵便物の確認を頼まれ、智恵さんは実家へ向かいました。

 

机の引き出しを開けると、見慣れない金融機関の通帳がありました。毎月末、複数の名義から合計30万円以上が入金されています。

 

不安になった智恵さんは、帰宅後、母に通帳を見せました。

 

「このお金、誰から振り込まれているの? 何か変な契約をしていない?」

 

すると紀子さんは、驚く様子もなく言いました。

 

「見つかっちゃったのね。私には秘密の収入があるの」

 

入金されていたのは、紀子さんが所有する賃貸物件の家賃でした。

 

紀子さんの夫は、生前、夫婦で貯めた資金と退職金を使い、駅から徒歩圏内にある築古の小さなアパートを購入していました。部屋は4室あり、現在はすべて入居中です。

 

家賃収入は月約31万円。そこから管理委託料や共用部分の光熱費、修繕に備える積立分などを差し引くと、毎月手元に残るのは平均約27万円でした。

 

さらに紀子さんは、夫が残した株式をそのまま保有するのではなく、金融機関や税理士に相談しながら、複数の国内株式と投資信託に分散していました。配当金や分配金は年によって変わりますが、直近では年間約84万円。月平均に換算すると約7万円です。

 

不動産と金融資産を合わせ、税引き前で月平均約34万円の収入があったのです。

 

「どうして黙っていたの?」

 

「言えば、あなたたちが当てにするかもしれないでしょう。それに、私が何も分からないと思って口を出されたくなかったの」

 

母の予想外の言葉に、智恵さんは返事ができませんでした。

 

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