金市場と米ドルの関係
それは米ドルに関係しているようです。S&P500指数が底値の4,800前後から6,300前後のピークにまで急上昇するなか、米ドルは弱含みで推移し、7 月には年初来の安値を更新しました。
「解放の日」以降の米国の金融的支配力に投資家が疑問を抱いていることや、最近ではFRBのウォラー理事やボウマン副議長によるハト派的な発言(およびパウエル議長の去就に関する懸念)も米ドル安の一因になっています。
しかし、単純な通貨効果以上に、金投資家は米国財政の行方に懸念を抱いているようです。実際、4月半ばから相互関税を巡って交渉の遅れや楽観的なツイートが増えたことから、貿易摩擦は「金価格上昇要因」から「金価格下落要因」へと変化するなか、「1つの大きく美しい法案(OBBBA)」が下院の可決を経て7月に成立しました。
米国議会予算局(CBO)では、この法案の成立によって予測期間10年間における累積赤字が控えめに見積もっても3兆米ドル拡大すると推計しています。
さらに、米ドル離れは国内だけの現象ではありません。2024年には、金の公的準備資産としての保有額がユーロを上回り、世界で第2位となりました。この傾向はすぐには逆転しないと思われ、金価格が1オンス3,000ドルを超えるという見方が強まっています。代替通貨としての金への需要は、現実味を帯びています。
さらに、金はテールリスクとデュレーションのヘッジとしても機能しています。金利ボラティリティは4月のピークから低下していますが、特に株式と債券の相関関係が高まっているため、債券の利回り曲線(イールドカーブ)※の長期ゾーンは依然として不安定になっています。
※ 債券の利回り曲線(イールドカーブ)……債券の利回りを縦軸に、償還期間の長さを横軸に取ったグラフのことを指します。償還までの期間が長いほど利回りが高い、右上がりの曲線を順イールドと呼び、償還までの期間が短い債券の利回りが高い右下がりの曲線を逆イールドと呼び、市場参加者の景気やインフレ、財政、金融政策への見通しがその形状の変化の仕方に影響を与えます。
クレジット・スプレッドの縮小、市場心理の改善に加え、経済の軟着陸(ソフトランディング)が市場に織り込まれているなかで、金価格の高騰は矛盾しているようです。
しかし、FRBは依然として様子見姿勢を維持し、とりわけ雇用やインフレといった遅行指標となるハードデータを重視しています。
今週は東南アジアの国が関税交渉で合意に達するなど、通商合意が徐々に進展していますが、米中間で新たな緊張が生まれれば、他の進展が阻害される恐れがあるため、市場はその動向に注目しています。
ほとんどの市場で高水準のバリュエーションが維持され、長期金利の見通しに不透明感が漂っている状況では、投資家はテールリスクに備えて、金などの安全資産や分散資産への選好度を高めるでしょう。
当社は、金市場が世界情勢を示す先行指標とは考えていません。金価格は他の資産市場に反応して動くものであり、相互に影響し合う資産(原油と新興国通貨など)とは異なるからです。しかし、米国のリスク資産が新高値を更新するなか、金価格は表面下に潜在的なリスクが隠れていることを示唆しています。
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