(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産を購入する際、「夫婦共有名義にすると節税になる」と考える人は少なくありません。たしかに一定の節税効果が得られる場合もありますが、資金の出どころによっては思わぬ課税リスクが潜んでいます。形式上の名義分けが「贈与」とみなされることもあり、後から税務署に指摘されるケースもあるのです。

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「節税になるから」と名義を分けた結果…

「まさか、こんなことになるなんて思ってもみませんでした」

 

そう語るのは、都内在住の会社員・松尾啓一さん(仮名・60歳)。定年を見据え、数年前に妻との共有名義で郊外に土地を購入。将来的に二世帯住宅を建てる計画でした。

 

きっかけは、知人からのアドバイスでした。

 

「夫婦で半分ずつ名義にしておくと、将来売るときにも節税になるって聞いたんです」

 

確かに、土地や建物を夫婦で共有することは、相続時の節税対策として一般的です。また、売却時にも譲渡所得控除の枠をそれぞれが持てることで、税負担を軽減できる可能性があります。

 

しかし――。購入からしばらく経ったある日、思いもよらぬ通知が届きました。差出人は税務署。内容は「贈与税の申告漏れに該当する可能性がある」というものでした。

 

「購入代金、どちらが出しましたか?」

 

税務署が注目したのは、名義の持ち分と実際の資金負担の“ズレ”でした。土地の売買契約では、啓一さんと妻がそれぞれ「50%ずつの共有」と記載されていたものの、実際の購入資金は啓一さんの口座から全額支払われていたのです。

 

「妻名義にした部分については、贈与があったとみなされます」

 

税務署からはそう説明され、啓一さんは頭を抱えました。実はこれ、「名義は半分でも、資金の出どころが一方に偏っていれば、贈与と判断される」――という、相続・贈与税の基本的な考え方に基づくものです。

 

啓一さん夫妻のように、税務知識がないまま「節税になるから」と名義を分けた結果、後から贈与税の課税対象になるケースは珍しくありません。

 

【贈与とみなされるケース】

 

以下のような場合は、税務署から「贈与」と判断される可能性があります:

 

●名義を分けたが、実際の支払いは片方のみ

●無償で名義を移転(不動産登記)した

●ローンを夫婦名義にしたが、返済は夫のみ

など

 

このようなとき、「贈与契約書がない」「贈与税の申告をしていない」なども指摘対象となります。

 

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