金は堅調な実需と地政学リスクで“記録的高値圏”を維持
(画像はイメージです/PIXTA)
2025年、金(ゴールド)価格は地政学リスクや政策の不透明感を背景に、「記録的な高値圏」での推移が続いています。その一方で、金需要は堅調さを維持。これには、安全資産としての需要やETFを通じた投資マネーの流入、中央銀行による継続的な買い入れなど、複数の構造的要因があると考えられます。本記事では、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが、他の主要資産や市場環境と比較しながら、2025年8月時点の金市場の動向と今後の見通しについて解説します。
中国の金需要は第2四半期に回復するも、見通しは不透明
中国のリテール向け金需要は、「解放の日」以降に改善し、現物金の価格を支える一因になっています。しかし、見通しは不透明です。中国の消費者需要の指標となる非貨幣用金の輸入量は、第1四半期の極めて低い水準から第2四半期に回復しました。
4月から6月までの月間平均輸入量は平均97トンで、1月から3月の同平均56トンから急増しています※15。しかし、輸入量は2023年から2024年の季節水準を下回っており、中国の金需要の先行指標であるオンショア市場の金価格の7月のプレミアムは4月の1.3%から0.2%に低下しました※16。
現在の現地の価格プレミアムは第1四半期のディスカウント水準から改善していますが、中国の金需要は夏場に軟化すると思われます。
米中間の貿易摩擦が緩和される可能性は否定できないものの、それが実現しても、中国国内の金ファンド需要が宝飾品や金地金・金貨の販売減少を補うには至らない可能性があります。そのため、現物金市場では、今後数ヵ月の価格発見および価格下支えにおいて、世界のETFの資金流入と中央銀行による金の購入が重要な役割を果たすと考えられます。
中国の地金・金貨の需要は「最高水準」に。宝飾品を上回る
地金と金貨の需要は、貿易政策の不確実性と地政学的緊張を背景に、2013年第2四半期以来の最高水準に達しました。中国では通常、宝飾品が主流の市場ですが、第2四半期は地金と金貨の需要が宝飾品を上回りました。
グローバル金ETFの強力なパフォーマンスと相まって、宝飾品部門の比較的弱いパフォーマンスは相殺され、世界全体の金需要は第2四半期に3%押し上げられました※17。貿易の不確実性、地政学的な不確実性、経済の不確実性が継続するなか、2025年下半期は金投資が全般的に堅調に推移する可能性があります※18。
世界の金宝飾品の需要は第2四半期に14%減少しましたが、これは主に価格が高いことが原因です※19。
季節要因、特にインドの祭礼や結婚シーズンの到来により、第4四半期は宝飾品需要の改善が見込まれていますが、複数年にわたる減少トレンドが今年逆転する可能性は低いでしょう。興味深いことに、主に宝飾品が占める金のリサイクル量は、第2四半期に4%しか増加しませんでした※20。
これは、インドにおける金の金融化が進んでいることが一因です。従来は農村部の消費者が地元の宝飾品の小売店に質入れする形態が主流でしたが、現在は都市部で銀行や他の金融機関が関与する形態が主流になりつつあり、特に30~40歳の若年層の消費者が増加しています。これは長期的に金にとって好材料です。なぜなら、これにより金の供給量が減少するからです。
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ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
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連載【ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント】金市場を徹底分析
【注釈】
※1 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 7/31/2025.
※2 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025.
※3 Source: State Street Investment Management, World Gold Council, as of 7/31/2025.
※4 Source: State Street Investment Management, World Gold Council, as of 7/31/2025.
※5 Source: State Street Investment Management, World Gold Council, as of 7/31/2025.
※6 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 7/31/2025.
※7 Source: State Street Investment Management, World Gold Council, as of 7/31/2025.
※8 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 7/31/2025.
※9 Source: IMF, respective central banks, World Gold Council, as of 6/30/2025.
※10 Source: IMF, respective central banks, World Gold Council, as of 6/30/2025.
※11 Source: IMF, respective central banks, World Gold Council, as of 6/30/2025.
※12 Source: IMF, respective central banks, World Gold Council, as of 6/30/2025.
※13 Source: IMF, respective central banks, World Gold Council, as of 6/30/2025.
※14 Source: YouGov, World Gold Council, as of June 17, 2025.
※15 Source:General Administration of China, as of June 30, 2025.
※16 Source: LBMA, SGE, as of July 31, 2025.
※17 Source: ICE Benchmark Administration, Metals Focus, World Gold Council, as of June 30, 2025.
※18 Source: ICE Benchmark Administration, Metals Focus, World Gold Council, as of June 30, 2025.
※19 Source: ICE Benchmark Administration, Metals Focus, World Gold Council, as of June 30, 2025.
※20 Source: ICE Benchmark Administration, Metals Focus, World Gold Council, as of June 30, 2025
【ご留意事項】
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本稿に示されている見解は2025年4月30日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があ
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