金と銀を比較する際に考慮すべき5つの要因
金と銀は以下の理由から、互いに代替可能な資産ではありません。
1.金は銀に比べて価格変動の低い資産。過去40年にわたる週次データからは、金の実現価格ボラティリティ(変動率)が米国株よりも平均で1.3ボラティリティ・ポイント低いことが示されています。これとは対照的に、銀の実現価格ボラティリティは米国株を平均で10ボラティリティ・ポイント上回っています※1。
2. 銀は金よりも大幅で頻繁なドローダウン(資産価格の下落)に見舞われる傾向にある。過去40年の四半期リターン・データからは、銀価格が少なくとも10%下落した局面が18回発生したのに対して、金は4回にすぎなかったことが示されています。さらに、銀の四半期ドローダウンの最大値は30.9%と、金の22.7%を上回っています※2。
もちろん、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを予測する信頼できる指標となるものではありません。しかし、この数十年間の四半期リターンの平均値が、銀で1.8%、金で1.7%と、ほぼ一致していることを考慮すると、価格ボラティリティの差はなおさら目立ちます※3。金の価格の安定性が銀よりも高いのは、銀よりも低いボラティリティと高い流動性が要因となっていると考えられます。
3. 金と比較して銀は米国株式に対する相関が高い。通常、投資家は貴金属への投資にあたっては分散効果を求めます。しかし、長期にわたる静的および移動平均相関分析によると、金は株式に対して不規則な値動きを示しているのに対して、銀は株式に対して極めて強い正の相関関係にあることが示されています※4。これは、銀が「卑金属(ベースメタル)」のような動きを示し、景気循環に敏感な傾向にあるためかもしれません(下記のポイント5を参照)。
4.中央銀行は銀ではなく金を購入。物理的な金に対する公的部門の需要は金価格の下値を支え、下方ボラティリティを抑制する役割を果たします。また、金をグローバルな通貨システムに組み込むことにもなります。実際、金は2024年に公的部門が保有する準備資産として、ユーロを抑えて第2位に浮上しました※5。
一般に中央銀行の金購入は、短期的なリターン獲得のためではなく、物理的な資産の保有を通じた脱ドル化や信用リスクの低減など、戦略的または地経学的な配慮によるものです。世界金融危機以降の金需要曲線の変化はこの点において重要な意味を持ち、主要な金鉱山からの供給に占める中央銀行の金需要は2010年の10%~15%から2022年~2024年には25%~30%に上昇しました※6。
銀は中央銀行が保有しておらず、そのような大規模な買い手は存在しません。
5. 銀需要は産業活動と結びついているのに対して、金需要ははるかに反循環的。過去10年間の銀の総需要に占める産業用需要の割合は50%を上回っており、2016年から2025年までの期間には10%ポイント近く上昇して59%に達しました※7。これとは対照的に金の場合、過去10年間の総需要に占める産業向け加工需要は7.5%で、2016年以降減少傾向にあります※8。
多くの投資家は金と銀を「金融資産」とみなしていますが、そもそも物理的なコモディティである点に留意することが重要です。銀の消費は産業向け用途に偏っているため、本質的に工業生産、PMI(購買担当者景況指数)、そして景気に敏感な成長シナリオの影響を受けやすいのが実情です。
銀と比較した金の固有の金融的・物理的特性は、防衛的、戦略的、あるいは戦術的な理由から金への投資を検討する際に、銀が金の代替とはならないことを裏付けています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
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