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「お父さん、自分の葬儀はこの家でやりたい!」
「いやぁ、父がすっかりヘソを曲げちゃって…」
そういって苦笑するのは、都内在住の兼業主婦の鈴木陽子さん(仮名・56歳)です。鈴木さんはこの夏、3年ぶりに静岡県の実家を訪れたところ、偶然のめぐりあわせで、きょうだい全員が顔をそろえることに。
時期はお盆で、まさに夏真っ盛りです。自然豊かなエリアにある実家は、蝉の声がにぎやかに響きわたり、広々とした地方の戸建て住宅の居間では、エアコンがひっきりなしに涼しい風を送っていました。
この家の主は、陽子さんの父親の田中滋さん(83歳)、そして顔を合わせたのは、長女の陽子さん、長男の田中優一さん(仮名・54歳)、次女の山田美香さん(仮名・51歳)。いずれも東京都に暮らしています。そして、子どもたちが持ち寄ったお菓子をテキパキと並べているのは、父親より1歳年上の母親、芳江さん(仮名・84歳)です。
田中家はおしゃべり好きで、家族が年齢を重ねてからも集まればワイワイと話が尽きないのでした。
冷たい麦茶をグビグビ飲みながら、父親の滋さんが話を先導します。
「この前、ヒロちゃんが亡くなったんだよ。ほら、伊豆に住んでいた遠縁の…」
「ああ、ヒロおじちゃん! いくつだったの?」
優一さんが畳みかけます。
「99歳」
「それは長生きだわ!」
「お葬式は行ったの?」
「挨拶行かなくていいの?」
みんなが口々にしゃべっているところへ、滋さんは大きな声で割って入ります。
「それでさ、お父さんは考えたんだよ。お父さん、自分の葬式はこの家でやりたい。親戚や友達を集めて、大好きなジャズを流して、みんなで立食パーティーを楽しんでもらえたらな…って。オードブル並べて、ビール片手にみんなでワイワイと…」
