(※写真はイメージです/PIXTA)

退職後の生活設計は、多くの人にとって人生最後の「計画」です。長年勤めあげた仕事を終え、年金と貯蓄で悠々自適に暮らす――。そんな思い描いていた老後が、ふとした想定外で揺らぐケースが増えています。特に、年金とあわせて退職金などの「自助努力」に頼る生活では、支出の見誤りや想定外の支援出費が重荷になることも。本記事では事例を通じて、老後資金計画の盲点を見つめ直します。

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誰もが他人事ではない「老後の資金計画の誤算」

「定年までまじめに勤め上げて、退職金もそれなりに出ましたから。不安は特にありませんでした」

 

そう語るのは、都内在住の元地方公務員・中川康一さん(仮名・現在68歳)。35年勤務の末、65歳で定年退職。公務員としての厚生年金に加え、退職金として約1,800万円を一括で受け取りました。

 

退職後の中川さんは、年金が月約10万円、退職金の一部を運用しながら生活。毎月の生活費を13万円程度に抑えることで、「80代まではこのまま問題なく暮らせるだろう」と試算していました。

 

しかし、穏やかな生活は長く続きませんでした。

 

転機は、娘夫婦の「帰省」でした。地方で共働きをしていた娘夫婦が、子どもの進学と転職を機に都内に引っ越してきたのです。すると、思いがけず「孫の塾代を少し支援してほしい」「一時的に生活費を立て替えてくれないか」といった相談が増えていきました。

 

「もちろん、助けてあげたい気持ちはありました。でも、自分の老後資金を崩してまで支援することになるとは…」

 

結果として、中川さんは2年で500万円以上を援助。さらに、自宅の給湯器やエアコンの故障など、まとまった修繕費も重なり、退職金は思っていた以上のスピードで減っていきました。

 

年金月10万円という金額は、単身世帯の生活費としては心もとない水準です。総務省の家計調査(高齢単身無職世帯)によると、月の支出は平均約16万円。中川さんのように退職金を補填に使っても、「想定外の出費」が続けば早々に底をついてしまいます。

 

中川さんは現在、近隣の小学校で週3日の用務員の仕事をして、月5万円ほどの収入を得ています。

 

「仕事ができるうちは、働いた方が安心ですね。退職後に、こんな形で“再就職”するとは思いませんでしたけど…」

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