(※写真はイメージです/PIXTA)

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有平均額は2,026万円。しかし中央値は700万円と大きな差があり、資産状況にはばらつきがあります。さらに総務省『家計調査(2024年)』では、高齢夫婦のみの無職世帯は可処分所得より消費支出が上回る傾向が示されており、どのタイミングでどう使うかが問われます。

「老後の夢」をかなえた長期クルーズ

「老後の夢だったんです。世界一周とまではいかなくても、一度くらい長い船旅をしてみたかった」

 

そう話すのは、関東近郊に住む山下さん夫妻(仮名・65歳)です。夫は会社員として定年まで勤め上げ、妻も長年パートで家計を支えてきました。退職時点での金融資産は約3,200万円。持ち家の住宅ローンは完済済みで、夫婦の年金見込み額は月20万円台前半でした。

 

「家もあるし、年金もある。だから、今しかできないことに少し使ってもいいんじゃないかと思ったんです」

 

二人が選んだのは、数ヵ月に及ぶ長期クルーズ旅行でした。船室のグレードや寄港地観光、船内での追加費用なども含め、最終的に使った金額は夫婦で1,500万円を超えたといいます。旅行代金だけを見れば高額ですが、長年節約してきたこともあり、当時は「まだ半分以上残る」と考えていたそうです。

 

船旅そのものは、夫妻にとってかけがえのない時間でした。朝、海を見ながらコーヒーを飲み、寄港地では現地の市場や街並みを歩く。夫は「会社に行かなくていい朝というだけで、十分幸せだった」と笑い、妻も「人生で一番長い休暇でした」と振り返ります。

 

船内では同世代の夫婦と親しくなり、食事を共にすることも増えました。これまで仕事と家事に追われて後回しにしてきた時間を、ようやく取り戻したような気持ちだったといいます。

 

「帰ったらまた節約すればいい。そう思っていたんです」

 

ところが、その“帰ってから”に待っていたのは、想像以上に重い現実でした。

 

帰国後しばらくして、妻が家計簿をつけ直したところ、夫婦の暮らしがこれまで思っていたほど余裕のあるものではないことに気づきました。旅の間は日常の支出から離れていましたが、現実に戻ると、固定資産税、火災保険、車の維持費、医療費、食費、光熱費と、毎月の出費は着実に積み上がります。

 

「年金で何とかなると思っていたんですが、そう単純じゃなかったんです」

 

総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月約22.2万円、消費支出は月約25.6万円で、平均すると毎月約3.4万円の赤字となっています。夫婦の年金もこの水準を大きく上回るものではなく、旅行から戻ったあとに残っていた貯金を、思ったより早いペースで取り崩していく見通しになりました。

 

「船旅に使った金額そのものより、“これから先も毎月足りないかもしれない”と気づいたことがこたえました」

 

 \3月20日(金)-22日(日)限定配信/
 調査官は重加算税をかけたがる 
相続税の「税務調査」の実態と対処法

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