フィリピン「過去最大予算」の光と影、マルコス政権「賭け」は成功するのか?

8月18日週「最新・フィリピン」ニュース

フィリピン「過去最大予算」の光と影、マルコス政権「賭け」は成功するのか?
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクター・家村均氏が、現地から最新状況を解説するフィリピンレポート。今回は、フィリピン政府が発表した過去最大となる2026年度国家予算案に見え隠れする、成長戦略という「光」と、財政悪化や外部環境の厳しさという「影」について読み解きます。

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フィリピンの未来を左右する国家予算案

フィリピン政府は、2026年度国家予算案(国家歳出プログラム=NEP)を発表しました。総額は過去最大の6兆7,930億ペソで、前年比7.4%増、GDP比22%に相当します。この予算案は13日、マルコス大統領がマラカニャン宮殿でパナンダマン予算相から受け取った後、同日中に議会へ正式提出されました。予算のテーマは「繁栄のためのアジェンダ:国の潜在力を最大限に引き出す未来志向の世代育成」です。政権3年間の基盤を踏まえ、インフラ、産業振興、食料安全保障、気候変動対策が重点分野とされています。

 

経済専門家は、この予算案がマルコス政権の中間地点における成長戦略と財政健全化の成否を左右すると指摘しています。フィリピン開発研究所は、「優先度の高い事業に集中すれば雇用創出や成長加速につながるが、国会での個別利益誘導型の政治的介入(インサーション)により資金がインパクトの大きい事業から逸れれば、成長の勢いが削がれ、財政目標の達成も困難になる」と警鐘を鳴らしています。過去には2025年度予算を巡り、資金流用や大規模公共事業への偏重に対する批判があり、大統領も「NEPと整合しない歳出法案には署名しない」と明言しました。

 

米国による19%の対フィリピン関税(8月7日発動)など、外部環境も厳しさを増している中、貿易摩擦が長期化すれば投資家心理悪化の懸念もあります。そのため、予算執行は政府の経済マネジメントの力量を示す試金石となるでしょう。

市場への影響…不動産と株式の行方

一方で、一部の市民団体は、社会保障・医療・教育・農業など高い乗数効果を持つ分野への再配分を求めています。特に、GDP比で社会支出が低下傾向にあり、医療費は2024年の1.4%から2025年は1.1%、教育は4.4%から4.3%に縮小する点を問題視しています。

 

歳出増に伴い、税収拡大策の必要性も議論されています。徴税強化や新税導入も検討すべきという意見や、パンデミック期並みの歳出規模は将来世代に継続困難との警告もあります。

 

不動産市場では、インフラ投資の継続が都市開発と地価上昇を下支えする可能性があります。しかし、予算の政治的配分が偏れば、地域間格差拡大や需要集中のリスクも残ります。特に、都市再開発や交通インフラ整備が計画通りに進めば、首都圏や成長都市周辺の商業・住宅物件の価値は中長期的に押し上げられるでしょう。

 

株式市場では、公共事業関連株や建設資材メーカー、物流企業が恩恵を受ける一方、米国関税の影響で輸出依存型企業は逆風が予想されます。財政規律が守られ、インフラと社会投資がバランス良く実行されれば、中期的には消費拡大と企業収益改善により株価の押し上げ要因となります。逆に、国会での個別利益誘導型の政治的介入や歳出の非効率化が進めば、成長期待は後退し、投資家心理の悪化を招く懸念があります。

 

2026年度予算は単なる数字の羅列ではなく、財政健全化と成長加速の両立を試す政治経済の分水嶺です。市場参加者にとって、その成立過程と執行の質は今後の投資判断の重要な材料となるでしょう。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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