施政方針演説に見る経済政策の具体像
2025年7月31日に行われたマルコス大統領の施政方針演説では、雇用創出、産業振興、農業支援、インフラ整備など、幅広い経済政策の方向性が示されました。
雇用に関しては、4%という低い失業率の維持を目標に掲げ、自動車や電子部品、金型といった成長分野への投資拡大を強調しました。こうした産業振興策は、企業の生産性向上による収益拡大への期待を高めます。これは株式市場における特定セクターの優位性につながり、ひいては雇用増を通じて住宅・商業施設への需要拡大に波及する好材料となる可能性があります。
農業分野では、生活必需品であるコメの価格抑制を目的に130億ペソの予算を計上しました。米価を1キロあたり20ペソまで引き下げる目標に触れ、消費者の購買力向上を後押しする計画です。
エネルギー政策では、今後3年間で約200カ所の発電所を建設し、未電化地域への電力供給を拡大する方針が掲げられました。これにより、関連企業やインフラ資産への中長期的な投資が活発化する兆しがうかがえます。さらに、新たに水資源管理省を創設する方針も打ち出され、水インフラ整備や関連不動産への追い風が意識されます。
インフラ部門では、鉄道・空港・港湾の建設計画が継続されます。加えて、公共交通機関における学生や高齢者、障害者への運賃割引率が20%から50%へと大幅に拡充される計画です。これは都市開発や郊外エリアの拡張ポテンシャルを示唆しており、多くの投資家にとって新規開発・再開発事業への関心を高める要因となっています。
政治的リスクと市場の展望
政治面では、サラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾問題に最高裁判所が介入したことで、司法の安定と手続きの透明性が示されました。その一方で、オンラインゲーミング規制、8月1日から発効予定の米国による対フィリピン製品への19%関税、西フィリピン海を巡る領有権問題といった懸念材料については直接的な言及がありませんでした。このため、外部要因による市場のボラティリティに対する警戒感は根強く残っています。
こうしたマクロ政策や地政学リスクを踏まえ、株式・不動産投資家にとっては、インフラや成長産業への選別投資、そして中長期的な資産形成戦略に注目が集まっています。今後も施策の具体化と外部環境の動向を注視し、柔軟な投資判断が求められる局面といえるでしょう。
