マルコス政権、任期3年目の現在地
マルコス大統領は2022年の選挙キャンペーンで多くの公約を掲げ、経済再生、農業振興、そして産業構造の変革を約束しました。しかし、政権発足から3年目に入った現在、多くのフィリピン国民は公約が十分に実現されていないと感じています。特に国民生活に公約の効果は及んでおらず、メトロマニラの洪水や物価上昇といった日常の困難が依然として続いています。
経済は、パンデミックによる2020年の大幅な縮小からは回復基調にあるものの、インフレや経済成長の鈍化という課題も抱えています。政府債務は増大し、2025年にはGDP比5.5〜6.5%の成長が予測されるも、先行きには不透明感が残ります。
専門家は、任期後半に向けて外資誘致や産業振興、貿易協定の多様化に注力すべきだと指摘しています。港湾の物流コスト高や煩雑な官僚手続きが外国投資の阻害要因となっており、抜本的な改革の必要性が強調されています。また、徴税効率の向上、年金制度の持続可能性確保、農業への最新技術導入といった社会経済改革も急務です。
政治面では、サラ・ドゥテルテ=カルピオ副大統領との対立や、2025年の中間選挙を見据えた政党勢力の流動化が、法案審議の障害となる可能性があります。これにより、マルコス政権の改革推進には困難が伴うとみられます。
こうしたなか、マルコス大統領は4回目となる施政方針演説(国情演説)において、腐敗や不正に断固として立ち向かう姿勢を示し、不十分であった洪水対策の調査と責任追及を約束しました。教育、医療、デジタル化の進展といった積極的な施策も訴え、国民の声に耳を傾ける姿勢は、今後の具体的な成果への期待を高めています。
全体として、マルコス政権は厳しい経済的・政治的課題に直面していますが、基盤整備や制度改革への一歩を踏み出している点は評価できます。国民の期待に応えるためには、公約の実行を加速させ、国民生活の改善を具体的に示すことが重要です。政治的な困難を乗り越えて持続可能な発展を遂げることが、2030年に向けたフィリピンの未来を創る鍵となるでしょう。
