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日本企業は従業員だけでなく、銀行との付き合いも「長期的」
日本企業は、原則終身雇用するなどして、従業員と長期的な関係を維持していますが、銀行との関係においても「メインバンク」と長期的な関係を維持しています。「借り入れごとにいちばん金利の安いところから借りればいい」という考え方もありますが、メインバンクとの関係も、合理的な面はあるのです。
日本の企業は「メインバンク」を決めています。「かかりつけ医」のようなもので、借り入れも預金も送金給与振込も、いつもメインバンクで行ないます。それにより、メインバンクは大きな利益を稼いでいます。メインバンクに「恩を売っている」わけです。
一方、メインバンクの責任といわれるものがあります。借り手が傾いたときに支援する、という「暗黙の了解」があるのです。法的な義務ではありませんから、違反しても罰金は取られませんが、借り手としては当然に支援してもらえるものと期待しており、実際、多くの場合支援が受けられるのです。
メインバンク制は「評判」で成り立っている
メインバンクは、法的な義務ではないのに、なぜ傾いた借り手を支援するのでしょうか? それは、メインバンクが心優しいからではなく、支援したほうが得…というか、支援しないと損するからです。
借り手との関係だけを考えれば、傾いた借り手を支援するのはリスクですし、損をする可能性も高いでしょうが、借り手を支援しないとメインバンクの評判が下がるのです。自分の銀行をメインバンクに選んでいる多くの企業が「あの銀行は冷たい! 別の銀行にメインバンクを頼もう」と考えて、取引をほかの銀行に移してしまったら大変です。そうならないように、支援せざるを得ないのです。
余談ですが、筆者は日本が攻撃されたときに米軍が守ってくれると信じています。べつに米国が優しい国だからではありません。日米安保条約があるのに日本を守らなかったりしたら、ほかの同盟国が「米国との同盟はアテにならない」と考えて同盟を解消されてしまうかもしれないからです。
評判の問題だとすると、借り手の状況があまりにひどい場合には支援しなくても大丈夫かもしれません。「あんな酷い借り手なら、ほかの銀行がメインバンクでも支援しないだろう」とみんなが思うからです。金融危機のときにはどの銀行も余裕がなかったので、支援しないケースも多かったのですが、当時は「ほかの銀行にメインバンクを頼んでも、やはり支援してもらえないだろう」と考える借り手が多かったので、借り手が逃げることはありませんでした。このように、支援するか否かはケース・バイ・ケースなのです。
メインバンクと借り手の関係は、それだけではありません。借り手がメインバンクの行員を「経理部長」として迎え入れる場合も多くあります。借り手としては、経理に詳しい人が来てくれることは助かりますし、メインバンクに対して「粉飾はしてません」ということが証明できるからです。じつは、粉飾していないことをメインバンクに信じてもらうのは容易なことではないのです。また、いざという時に「経理部長まで送り込んでおいて、支援しないのか」という世間の冷たい眼が期待できるということもあるかもしれません。
銀行としては、取引先の情報が正確に得られるのみならず、銀行で取締役になれなかった行員の第二の職場が提供できる、というメリットもあります。Win-Winの関係なのです。
下請け制度だって「合理的」
企業は、部品メーカーとも長期的な関係で結ばれています。いつも同じ「下請け」部品メーカーに発注するのです。毎回複数の部品メーカーから見積もりを取るのは面倒ですし、部品メーカーの技術力も誠実度合いも未知数なのは不安です。下請けならば、そうした不安はありませんし、打ち合わせも「前回どおりで」で終わりです。
部品メーカーとしては、「次は受注できないかもしれない」と思えば設備機械を買う勇気が出ないので、手作業で作ることになります。それはもったいないことです。下請けに指名してもらえば、次も受注できると確信できるので、自信を持って設備機械を購入することができます。それにより効率的に作業ができれば、納品価格を引き下げることができ、発注者にもメリットが及ぶのです。
新製品の開発に際しても、最初から部品メーカーに参加してもらえば、設計図ができた時にスムーズに生産に取りかかれます。設計図ができてから複数の部品メーカーに見積もりを出してもらうのと比べるとはるかにスムーズでしょう。
「次も受注ができると思うと下請けが手抜きをしかねない」と懸念する人もいるでしょうが、「手を抜いたら3年後に下請けを切る」と宣言しておけば、手を抜く下請けは少ないと思いますよ。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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