本記事のポイント
・マーケットの反応は買い戻し半分、今後の政局への期待半分
・期待が持てるシナリオは新総裁のもとでの自民党と国民民主党との連立
マーケットの反応は買い戻し半分、今後の政局への期待半分
7月10日配信記事『外国人投資家は「参政党」をみている…今夏の参院選は「相場」が崩れる始まりの日、日本株に何が起きるか【ストラテジストが解説】』では、以下のように述べた。
〇これまでは「選挙は買い」が相場の定石だった。与党勝利=日本の政治の安定=政策実行の確実性維持というのが株買いにつながってきた。
〇今回の参院選では、どう考えても与党の勝利は見えないが与党が敗北したら、株価は下落するのだろうか。必ずしもそうはならないと思う。
〇今回は負けても株高になるのではないか。
参院選の結果は周知のとおり。その結果を受けてマーケットは円高・株高で反応した。与党大敗で衆院・参院ともに少数与党となったわけだが、事前には懸念する声もあったものの、「日本売り」は起きなかった。
その理由として、メディアなどでは「与党は負けたが、予想したほどの大敗ではなかったから」とか「石破首相続投の表明で安心感」で買戻されたとの解説がなされている。
まったく違うと思う。まず、どこをどうみても歴史的大敗である。買戻しというのも、一部にはあるが、今日(7月22日)の高値は4万円を超えている。そこまで買い上がるのは決して「買戻し」とはいわないだろう。そして一番クエスチョンマークがつくのが「石破首相続投を評価した」という点だ。
筆者は真逆の見方をしている。前掲の記事では「今回は負けても株高」とみる根拠として以下のように述べていた。
〇いずれにせよ大幅議席減はほぼ間違いないのだから、多かれ少なかれ石破首相の責任問題になるだろう。その場合、市場はポジティブに反応するのではないか。
〇つまり石破政権は何もやってこなかった(に等しい)政権なので、そんな政権なら退陣してくれたほうがいい、よって株価は上がるというシナリオだ。さらに石破政権退陣後にもっといいリーダーが出てくるかもしれないという期待が高まれば、上昇基調が強まるかもしれない。
石破首相は続投の意向を表明したというが、それで持つだろうか? 自民党が、そして日本の政治が、である。衆院・参院ともに少数与党となって首相続投は、どう考えても無理筋だ。しかしそうなることも予想済みである。
〇しかし、上述のシナリオ(石破首相退陣―新しいリーダーの誕生)の実現性については、ちょっと難しいだろうなというのが正直なところだ。なぜなら、いまこれだけ難しい局面で石破首相の後を継ぐというのは、まさに火中の栗を拾うようなものだからだ。だからまっとうな後継者が出てこない恐れがある。
〇よってぎりぎり過半数維持か、仮に過半数割れでも、結局、後任がいないために石破政権がダラダラ続いてしまう――それは最悪のシナリオだと思うが――それがメインシナリオではないか。
今回の参院選直後のマーケットの反応は、ざっくりいって買戻しが半分、もう半分は今後の政局への期待だろう。買戻しとなった理由は、ここまでの展開が、「ほぼ予想どおり」「ノー・サプライズ」だったからだ。そして残り半分の「今後の政局への期待」というのは、早晩、石破首相が退陣するという期待だ。あるいは野党を巻き込んでの連立の枠組みの再構築だろう。今回の参院選の結果が示唆するものは、有権者が旧体制にノーを突きつけたということだ。それが有権者からのメッセージだ。変わらざるを得ないだろう。
それでは野党の要求を丸呑みして消費税減税などに走り、財政悪化懸念から金利が上昇するシナリオか? それなら株価も持たない。日本売りのトリプル安になる。
そうはならないだろう。今回の結果は与党の大敗だが、野党もすべてが躍進したわけではないのだ。伸びたのは国民民主党と参政党だけで、あとはみるところがない。ただでさえ野党の要求もバラバラで絞り切れていないので、現実問題としての消費税減税にはたどり着かないだろう。
