リスクを可視化し合理的に対応する
リスクがないところにリターンはない__投資と同じ考えで、リスクを積極的に取らないと大きな利益は得られません。仮にリスクがまったくないにもかかわらずリターン(利益)を得られるのであれば、競合他社も含めてあっという間にみんながそのやり方を選ぶことになります。プロジェクトマネージャーとしてリスクをある程度許容することはリスクマネジメントにおける一つの前提にもなります。
しかし、すべてのリスクを許容しなければならないとなると、膨大な労力とコストがかかってしまいます。そうならないようにするために、どのようなリスクを許容するのかを分析して、リスクに対する優先度を評価します。これはPMBOKのなかにもある考え方で、一般的なプロジェクトマネジメントを行う際にもよく用いられます。
図表1のように横軸に「リスクの影響度」、縦軸に「リスクの発生確率」をおいて、その掛け合わせでリスクをスコア化します。具体的には、リスクの発生確率と影響度を掛け合わせて点数化し、その点数によってリスク等級を高・中・低の3つに分類します。ここでは、リスクスコアが4ポイント以下は「低」、5ポイント以上は「中」、13ポイント以上は「高」とします。
次に実施するのは、リスクへの対処法を決めることです。全部で5つの方法があり、さきほどのリスク等級の高低によって、その対処法が異なってきます。
「回避」とは、事前にリスクの原因を取り除く対策を講じ、リスクを発生させないようにすることです。例えば「スキルがアンマッチなメンバーがいれば、事前に交代させる」「外的変化により、構想していた新規事業を撤退する」などが該当します。
「転嫁」とは、リスクによる影響を第三者へ移転する方法です。「損害保険をかける」「ベンダー契約を見直して自らの責任範囲を限定する」などがあります。この対策では、リスクを完全に取り除いたわけではないため、転嫁のためのコストが必ず発生してしまいます。
「軽減」とは、リスクの発生確率を下げる、もしくはすでに顕在化している影響度を小さくすること、またはそれら両方の対策を行う方法です。「品質リスクに対してテストを強化する」「作業が遅延するリスクがあれば人員を増やす」などの対策があります。この場合も、リスクを低減する代わりにコストが増加する可能性があります。
「受容」とは、リスクを受け入れ、プロジェクトの計画を変更しない方法です。これについては2通りの対処法があります。


