柔軟な財産管理・事業承継ができると話題の「民事信託」…改正信託法の施行から15年以上を経て、裁判に発展しまうようなトラブルも続発していて…信託紛争リスクを実際の裁判例から【弁護士が解説】

柔軟な財産管理・事業承継ができると話題の「民事信託」…改正信託法の施行から15年以上を経て、裁判に発展しまうようなトラブルも続発していて…信託紛争リスクを実際の裁判例から【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化社会を背景に、財産管理や事業承継の手段として注目されている「民事信託」。その柔軟性ゆえに活用が広がる一方で、信託の本質や法制度を無視して作成された信託に法的な未整備や認識不足に起因するトラブルも散見され、訴訟に発展するケースも少なくありません。本稿では、信託の成立要件や受託者の義務、公序良俗との関係、さらには遺留分との衝突など、民事信託をめぐる重要な裁判例を取り上げ、制度活用に潜むリスクと、その設計時の留意点について考察します。

民事信託に関する裁判例

柔軟な財産管理・事業承継を可能とすることから、民事信託の件数が増えている一方で、様々な問題が生じています。まだ民事信託の裁判数は豊富とはいえませんが、今回はそのなかでも特筆すべき裁判例をいくつか簡単にご紹介させていただきます。

 

◆信託の成立要件等に踏み込んだ判例(大阪高判平成20年9月24日)

事案は、転借人が転貸人に提供した敷金4億円をもって転貸人が賃貸人に敷金を提供した場合において、転借人・転貸人間で、賃貸人に対する敷金返還請求権を信託財産とする信託契約が成立していたか、敷金につき分別管理がなされていたかが争点となった事案です。

 

裁判所は、実質的な賃貸借関係が転借人と賃貸人との間にあって転貸人が形式的に介在したにすぎないという事情もないことから、転借人と転貸人との間で、賃貸人に対する敷金返還請求権を信託目的とする旨の合意をして信託契約をしたとまでは認められない旨を判断しました。

 

本判決は、信託の成立要件として、①財産権の処分、②他人をして一定の目的に従い財産を管理または処分をさせること、を挙げたうえで、信託設定意思の内容として、いくつか要素があるもののうち、分別管理義務を負わないものは信託でないことを明確にしたことに意義があるといえます。

 

本判決は、旧信託法下の信託の成否について検討したものであるといえますが、特に信託については、信託財産が受託者の固有財産からは切り離された独立したものであり、倒産隔離・執行隔離された性質をもち、委託者に取戻権が確保されていることからも、分別管理義務を重視している点は重要だといえます(ただし、現実に信託財産が分別管理されているかは別問題です)。

 

信託契約といっても、信託財産を受益者のために信託目的に従って管理運用させるために託す信託としての条件を充足しないものは、信託契約として無効とされる可能性も否定できないように思われます。組成者としては、信託の成立要件だけでなく、信託を構成する要素に配慮して有効な信託を組成することの重要性を考えさせられる判例です。

次ページ◆受託者のための信託と考えられるケース(東京地判平成31年1月25日)
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