富裕層の投資・資産運用
富裕層の投資対象は、不動産から金融資産といった伝統的なものだけでなく、アート、貴金属、競走馬、ジェット機など多岐に渡ります。
依頼者の資産を増やすことを目的とした投資アドバイスは、依頼者のファイナンシャルアドバイザーなどが行いますが、投資対象の法務のアドバイスは弁護士、税務のアドバイスは税理士が行います。
富裕層が新しい資産を取得するとき、税務的に個人で保有すべきか法人名義で保有すべきか、信託を介した投資の法務的・税務的問題はないかなど、取得・保有・処分にあたっても検討すべき法務・税務事項は数多くあります。
今回は、不動産・金融資産を除外した富裕層が保有する特有の資産の法務的な留意事項に絞って概観します。
アート(絵画・彫刻・写真等の美術品)および骨董品
アートおよび骨董品(以下、「アート等」)は、不動産と同様現物資産としてインフレリスクや地政学リスクのヘッジ資産となります。
一方、長期投資としてキャピタルゲインを期待してアート等に投資をする人もいます。欧米のプライベートバンクには、アート等への投資を専門とするチームもあるほどです。
米国、ヨーロッパ、香港とアートマーケットは大きく、これまでアート取引等の支援をさせていただいた依頼者もすべて外国人でした。しかしながら、日本のアート市場も海外からの注目を集めるようになっており、またアート等の収集を行う日本の富裕層も増加しつつあるとアートビジネス界の方々からは伺っております。
アート等の取引は、通常は、美術商を通じて行われます。真贋性をテーマとするTV番組もありますが、アート等には真贋性の問題がつきまとい、またアート等には独自の販路があるからです。さらに、アート等の取引の特色として秘匿性が高いという問題もあろうかと思います。
取引自体は、アート等の所有権をいったん売主から美術商に移転して、美術商が買主に売却するいわゆるバイセル型、所有者が美術商に販売委託して買主に売却する委託販売が主要な形式です。感覚としては委託販売形式が多いように思われますが、当事者の法的責任は各取引形式によって異なるため留意が必要です。
アート等の法的リスクとして最も多いのは、真贋性と権原(売主が所有権を有しているか)という問題です。贋作を購入させられたり、他人物売買の被害者となった買主は、売主又は美術商に対し、民法・商法上の責任を追及することになります。美術商との取引で買主が個人の場合は、消費者契約法や特定商取引法等の適用もあります。
さらに、アート等の取引には意外な盲点として購入した商品が盗品であった場合があります。盗まれる前の元の所有者は、盗品の所在を突きとめると、現在の保有者に返還を請求すれば、現在の保有者が即時取得者であっても取り戻すことができます(民法193条)。ただ、保有者が美術商等から購入していた場合は、返還を受けるためにはその代金を支払うことが必要です(民法194条)。
アート等も経済的価値があるため、相続税の課税対象になります。重要文化財に指定された美術工芸品又は登録有形文化財(建造物は除きます)で世界文化の見地から歴史上、芸術上、学術上特に優れた価値のある美術品(特定美術品)については、近年納税猶予制度が創設されました。
アート等のコレクターである富裕層は、特定美術品を、博物館等に貸与することもよくありますが、重要文化財を博物館に無料で貸与していた所有者が死亡した際に、相続人であるご家族も貸与している事実を失念されており、その後遺産として発覚したアート等が税務上問題となったケースもあります。
貴金属
金を含む貴金属は、富裕層の投資対象としては人気商品といえます。貴金属自体は収益を生まないことから主要な投資目的はキャピタルゲインを得ることになりますが、金については、株式市場が下落する局面で、一般的に価格が上昇するといわれていることから、安全資産としての投資価値があると言われています。
過去には、相続が発生し、貸金庫の開扉の立ち合った際に、貸金庫から金や銀の延べ棒(インゴット)がたくさん出てきて驚いたことがあります。最近は、地金等の貴金属を取引業者に寄託して保管する方法を取られることが多いように思いますが、法律関係には、地金の所有権が移転する消費寄託方式と、地金を混蔵して分別管理する混蔵方式が主なものといえます。
ジェット機
航空機のなかでも、富裕層個人の投資対象となるのはジェット機やヘリコプターです。プライベートジェット・プライベートヘリは、移動時間の節約、ステータスという魅力がある一方で、中古価格が安定している資産であり、かつ法定耐用年数が短く節税効果が高いことからも富裕層の投資対象に選択される資産といえます。
航空機の所有は共有で行われることも少なくありません。共有の場合は特に管理や処分に関するルール等を契約で取極めておく必要があります。共有状態にある場合は流動性が制約されますが、そのために売却の機会を喪失するのは投資対象としての意味がないからです。
酒井 ひとみ
シティユーワ法律事務所
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