「思っていたより年金が少ない」…想定外の事実
Aさん(64歳)は大学卒業後から長年勤め上げた地元企業を数ヵ月後に退職予定。いよいよ年金をもらえる年齢が目前となりました。家計管理は妻に任せていたものの、毎年届くねんきん定期便は一応開封し、年金見込額だけはざっと見ていたそうです。
その額は月16万円ほど。同じ年の妻も月10万円ほど受け取れる予定。長く支払ってきた年金保険料の恩恵をようやく受けることができる、貯蓄と退職金も合わせれば老後も乗り切れそうだ……そう考えていたとのこと。
しかし、実際にはその金額を丸々受け取れるわけではありません。年金からは税金や社会保険料が引かれるからです。Aさんは友人からその事実を知り、調べたところ、実質的な手取りは月14万円ほどになることが判明しました。
ねんきん定期便の記載額は社会保険料や税金が引かれる前の概算額ですが、全額そのまま受け取れると勘違いするケースが少なくないのです。Aさんもその1人で、その事実にショックを受けたといいます。
「年金からも税金や社会保険料が引かれるなんて……」
そういった声も聞かれますが、年金=所得のため、一定額を超えると所得税・住民税などの対象になります。また、医療保険料や介護保険料も支払わなくてはなりません。多くの場合、年金額面の10~15%程度が天引きされます。
さらに、年金にはこんな落とし穴が存在します。
年金は自動的に振り込まれる?
基本的な話ではありますが、「年金は何もしなくても自動的に振り込まれる」と勘違いしてしまうケースがあります。
実際には、年金の受給権が発生する人に対して、受給開始年齢に到達する3ヵ月前に「年金請求書」が送付されます。その請求書に必要事項を記入して送り戻すと、約1~2ヵ月後に「年金証書・年金決定通知書」、「年金振込通知書」が届き、いよいよ年金の受給開始になります。
こうした通知を確実に受け取るため、引っ越しの際などには忘れず手続きをすることが大切です。なお、65歳で請求せず、「繰下げ受給」を選択することも可能です。
ねんきん定期便に記載されない「隠れ年金」とは?
65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいる場合、「加給年金」が上乗せになります。厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が対象で、配偶者が65歳になると「振替加算」に移行します。
加給年金(年額)は、配偶者239,300円、第1子・第2子は各239,300円、第3子以降は各79,800円(毎年改定)。申請するには、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」に必要書類を添えて年金事務所へ提出する必要があります。
加給年金の対象者は一部なので、ねんきん定期便に記載欄がありません。自分で申請しないと受け取れないため、対象かどうか事前にチェックしておきましょう。
たかが数万円?…勤労収入がなければ大きな差
そもそも年金自体、現役時代の収入と比べると少なく感じ、収入減に悩む人もいるなかで、月1~2万円の差でも年金生活者にとっては大きな差になります。前出のAさんも年金受給を目前に知った事実に、老後プランの変更も考えているとのこと。
「知らなかった自分が無知だったとはいえ、もともと少ない年金が一層少なくなって、不安が膨らみました。65歳から働く気はなかったんですが、やっぱりアルバイトでもいいからちょっと稼ごうかな。そんな気持ちになっています」
年金制度は複雑で、自分で把握するのは難しいケースもあります。手取りがいくらになるかは、年金額や家族構成、居住地などによって異なるため、受給年齢が近づいたら、近くの年金事務所や年金相談センターで相談してみるのも一考。きちんと受給額を把握し、老後のプランを立てましょう。
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