(※写真はイメージです/PIXTA)

孫の存在は、ひとり暮らしの高齢者にとって心の支えになることがあります。とはいえ訪問や預かりが日常化すると、食費や光熱費、体力面の負担が見えにくい形で積み重なります。「かわいいから断れない」という思いが、老後の暮らしを圧迫することもあるものです。

「ばぁば、今日も来たよ」嬉しかったはずの声が…

良子さん(仮名・70歳)は、夫を数年前に亡くし、現在は一人で暮らしています。受け取っている年金は月12万円ほど。持ち家のため家賃はかかりませんが、固定資産税や医療費、光熱費を払うと、毎月の余裕は多くありません。貯蓄は約1,100万円ありましたが、「これを減らしすぎるわけにはいかない」と考えていました。

 

娘夫婦は同じ市内に住んでおり、小学2年生の孫がいます。良子さんの家から小学校までは歩いて行ける距離でした。最初は、娘が残業の日に少し預かる程度でした。

 

「ばぁば、ただいま」

 

ランドセルを背負った孫が玄関に立つと、良子さんはうれしくなりました。おやつを出し、宿題を見て、夕方まで一緒に過ごす。静かだった家に子どもの声が戻ることは、良子さんにとっても張り合いでした。

 

ところが、孫が来る日は少しずつ増えていきました。娘は共働きで忙しく、学童保育に行きたがらない孫が「ばぁばの家がいい」と言うようになったのです。

 

「今日も行っていい?」

 

そう聞かれると、良子さんは断れませんでした。孫に寂しい思いをさせたくない。娘夫婦も大変なのだから助けたい。そう思う一方で、内心では「また今日も来るのか」と身構えるようになっていました。

 

孫が来る日には、おやつ代や夕食代が増えます。夏は冷房をつけ、冬は暖房を入れる時間も長くなります。帰りが遅くなれば、娘の迎えを待つ間、良子さんは夕食の片づけも入浴も後回しにしなければなりません。

 

「ばぁば、これ食べたい」

 

スーパーで孫にそう言われると、つい余分に買ってしまいます。1回数百円の支出でも、週に何度も続けば家計には響きました。

 

総務省『家計調査報告 2025年(令和7年)平均』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得は月約11.8万円、消費支出は月約14.8万円で、平均では毎月約3万円の不足が生じています。孫のための支出が重なるたび、貯蓄を取り崩す不安が大きくなっていきました。

 

ある日、孫が笑顔で言いました。

 

「ばぁば、今日も来たよ!」

 

その無邪気な声に、良子さんは思わず言葉を失いました。かわいいと思う気持ちは変わりません。ただ、胸の奥には「今日は一人で休みたかった」という思いがありました。

 

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