「我慢してどうする」8,000万円の資産で食道楽を極めた70歳男性
「健康第一なんて言って細く長く生きるより、美味いもん腹いっぱい食って太く短く死んだほうがいいでしょ。俺、独身だしさ」
かつて周囲にそう豪語していた西田さん(仮名・70歳)は今、その言葉を心から後悔しているといいます。
西田さんが定年を迎えたとき、手元には自らの貯蓄と退職金、さらに親からの相続分を合わせて総額8,000万円という潤沢な資産がありました。しかも独身。誰に遠慮する必要もなく、すべて自分一人で使えるお金です。
さらに、月18万円ほどの年金も入ってきます。身を捧げた会社員人生も終わり、これからの時間は「ご褒美」。特にエスカレートしたのが「食」へのこだわりでした。
平日の昼から星付きの高級鮨店やフレンチの名店へ赴き、ヴィンテージワインを次々と空ける日々。店側から常連として迎えられる快感もあり、足繁く通い詰めました。
高いお店と並行してハマったのが、ラーメンでした。数えきれないほどあるお店を制覇したいと、グルメブックに〇をつけながら行列に並んで、あちこち食べ歩くようになったのです。
「旅行も行ったけど、結局毎日楽しめるのって『食べること』でしょ? 美味しいものを食べに出かけることが、自分にとっては趣味だったんです。お金があるのに自炊なんて、意味ないと思っていたしね」
しかし、そんな“無敵の食道楽”の生活は、あっけなく終焉を迎えます。
生活を一変させた、医師のひと言
退職から5年、いつのまにか増えた体重は30kg強。健康診断で医師から下された診断は、「糖尿病の初期段階」でした。
それでも強気に「太く短く逝けたら本望だ」と西田さんが言うと、医師は「西田さん、そんなに都合よくいくとは限りませんよ」と言ったうえで、人工透析や失明、足の切断――悪化した先にある「死より身近な現実」を淡々と説明したのです。
西田さんは、ようやく現実を直視しました。独身の自分を誰が介護してくれるのか? 施設に入れば面倒を見てもらえるのか。いや、共同生活では自由な暮らしは望めない。お金がいくらあったって――。
それ以来、生活は一変。毎日自分でカロリーを計算し、薄味の食事を自炊し、雨の日もせっせと歩く。失われかけた健康を取り戻すために、必死の毎日を過ごしています。

