(写真はイメージです/PIXTA)

米国センサス局は2025年5月の住宅着工件数がコロナ禍で落ち込んだ2020年5月以来の水準に減少したと発表しました。また、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売の住宅市場指数は、市場予想に反して悪化しています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、最新の統計から米住宅着工・許可件数について解説します。

集合住宅の着工件数が前月比で大幅に減少

住宅着工件数の伸びは前月比▲9.8%(前月:+2.7%)と前月からマイナスに転じた(図表3)。戸建て住宅が+0.4%(前月:▲3.0%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じたものの、集合住宅が▲29.7%(前月:+16.0%)と2桁のマイナスに転じて着工件数全体を押し下げた(図表4)。

 

出所:センサス局よりニッセイ基礎研究所作成
[図表4]住宅着工件数前月比(寄与度) 出所:センサス局よりニッセイ基礎研究所作成

 

前年同月比は▲4.6%(前月:+0.5%)と3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。集合住宅が+4.1%(前月:+42.2%)と3ヵ月連続でプラスを維持した一方、戸建てが▲7.3%(前月:▲12.6%)と前月からマイナス幅は縮小したものの、5ヵ月連続のマイナスとなって全体を押し下げた。

 

地域別寄与度(前月比)は、西部が+2.6%ポイント(前月:▲3.7%ポイント)と前月からプラスに転じた一方、北東部が▲5.0%ポイント(前月:+2.0%ポイント)、南部が▲5.8%ポイント(前月:+5.8%ポイント)と前月からマイナスに転じたほか、中西部が▲1.5%ポイント(前月:▲1.3%ポイント)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

 

先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が▲2.0%(前月:▲4.0%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表5) 戸建てが▲2.7%(前月:▲5.0%)と3ヵ月連続でマイナスとなったほか、集合住宅も▲0.8%(前月:▲2.0%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表6)。

 

出所:センサス局よりニッセイ基礎研究所作成
[図表6]住宅着工許可件数前月比(寄与度) 出所:センサス局よりニッセイ基礎研究所作成

 

前年同月比は▲1.0%(前月:▲2.5%)と 2ヵ月連続のマイナスとなった。集合住宅が+10.5%(前月:+4.8%)と2桁のプラスとなった一方、戸建てが▲6.4%(前月:▲6.1%)と12ヵ月連続のマイナスとなって許可件数全体を押し下げた。

 

一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、25年6月が32(前月:34)と前月からの回復を見込んだ市場予想(36)に反して、22年12月以来の水準に悪化した(図表7)。

 

出所:全米建設業協会(NAHB)よりニッセイ基礎研究所作成
[図表7]住宅市場指数(項目別) 出所:全米建設業協会(NAHB)よりニッセイ基礎研究所作成

 

内訳は販売現況が35(前月:37)と12年6月以来の水準に落ち込んだほか、販売見込みが40(前月:42))、客足が21(前月:23)とそれぞれ23年11月以来の水準に悪化した。

 

6月の結果について、NAHBのバディ・ヒューズ会長は「住宅ローン金利の上昇と関税、経済の不確実性により、買い手はますます傍観者に移動しています」と住宅需要が低迷している状況を示した。また、NAHBは最新の調査で建設業者の37%が6月に値下げを報告したとし、これは22年に月次統計を開始して以来の高い水準となったことを指摘した。このような住宅需要の弱さに加え、住宅着工許可件数がマイナスとなっていることを踏まえると当面住宅着工件数は軟調に推移することが見込まれる。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年6月19日に公開したレポートを転載したものです。

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