北米向け乗用車の輸出物価が契約通貨ベースで急低下
トランプ関税の影響が経済指標に徐々に表れ始めた。財務省の「貿易統計」によれば、25%の追加関税が課せられた米国向け自動車輸出は4月に前年比▲4.8%と4ヵ月ぶりに減少したあと、5月は同▲24.7%と減少幅が急拡大した。輸出数量は4月の前年比11.8%から5月には同▲3.9%と減少に転じたが、減少幅はそれほど大きくない。一方、輸出価格は3月の前年比▲1.5%から4月に同▲14.8%と急低下したあと、5月は同▲21.7%とマイナス幅がさらに拡大した。米国向け自動車輸出は輸出価格の急低下を主因として大幅に減少している(図表1)。
貿易統計の輸出価格指数は円ベースのため、為替変動の影響が含まれるが、日本銀行の「企業物価指数」では、契約通貨ベースと円ベースの輸出物価指数が公表されている。北米向け乗用車の輸出物価指数を契約通貨ベースでみると、3月の前年比▲1.5%から4月が同▲8.1%、5月が同▲18.9%と2ヵ月連続でマイナス幅が急拡大した(図表2)。
米国向け自動車輸出の価格が大幅に低下したのは、円高よりも契約通貨ベースの価格が急低下した影響のほうが大きいことが読み取れる。
関税引き上げによる輸出への影響は、価格競争力低下による数量の減少と数量の落ち込みを緩和するための輸出企業の価格引き下げに分けられる。現時点では、自動車メーカーが値下げをすることにより関税コストを一定程度吸収していると判断される。


