Aさんを襲うさらなる悲劇…最終的な「追徴税額」は
また、Aさんは折り合いの悪い息子とは長年連絡をとれていません。そのため遺産分割も行われておらず、相続財産は「未分割」の状態でした。
前述のとおり、未分割の場合「配偶者の税額軽減」は使えないため、いったん法定相続分で相続税の申告と納付を行う必要があります。
その後、申告書とともに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、後日分割が決まったときに「配偶者の税額軽減」の適用を受けることができます。なお、適用を受ければ手続きのあと相続税を還付してもらうことが可能です。
しかし、Aさんは遺産が「未分割」だったうえに申告書が未提出であったため、この「配偶者の税額軽減」は適用されませんでした。
そのため、相続税約1,200万円に加え、無申告加算税や延滞税など300万円が課されることに。Aさんは、うなだれるしかありません。
「1,500万円!?……年金暮らしなのに、そんな大金払えない……」
Aさんの“無知”と“勘違い”が招いた追徴課税
Aさんは「配偶者の税額軽減」について「よほどの金額でない限り、配偶者の相続税は非課税」と、自分にとって都合の良い部分だけを記憶。その結果、相続税の申告を怠ってしまいました。
前述のとおり、「配偶者の税額軽減」は申告期限から3年以内であれば、期限(相続発生から10ヵ月後)のタイミングで未分割であっても、手続きを行うことで適用が可能です。
しかし、Aさんは未分割の状態で申告を行わず、3年以内という期限も過ぎてしまったことから、適用は難しいでしょう。
「配偶者の税額軽減」の適用には、未分割の状態であっても、とにかく「10ヵ月以内」に申告を行っておくことが重要です。息子さんと音信不通であったとしても、遺産分割は行わなければなりません。
この場合、弁護士に依頼し、裁判所に申し立てるなど、法的に問題のない遺産分割手続きを進める必要があったといえます。
思わぬ追徴課税を避けるために…専門家の力を借りて、確実に申告を
配偶者を亡くすと、自分が想定している以上に気が動転します。また、配偶者の逝去に伴う「諸々の処理」は非常に煩雑であり、よほど事前に準備していない限り、冷静であれば「こんなことあり得ないだろう」と感じるようなミスを犯してしまうことも少なくありません。
今回紹介したAさんも「なんで税務署から電話があったときにきちんと調べなかったんだろう。もっと早く相談していればよかったです」と悔やまれていました。
「配偶者の税額軽減」は、適用されれば相続税額を大きく減らせるものの、正しく理解していないとかえって多くの税金を課される可能性があります。
まずは自信の基礎控除額を把握したうえで、相続税の課税財産が基礎控除額を上回るときは申告が必要となります。判断に迷った際は専門家に相談のうえ、適切に手続きを進めることをおすすめします。
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