35年ぶりの帰省で父と再会した55歳息子
斉藤浩一さん(仮名・55歳)は、ある地方都市で勤務するサラリーマンです。年収は600万円ほどで、子どもはすでに独立しており、現在は妻と2人で暮らしています。
浩一さんは高校時代、将来のことで父親と大喧嘩。それ以降、ほとんど話さなくなってしまいました。そのため実家にもほとんど帰っていません。最後に帰ったのは成人式の日です。そんななか、実家近くに住む妹から浩一さんのもとに連絡が入りました。
「お父さんが亡くなった。1回帰ってきて」
急な知らせに驚く浩一さんでしたが、帰らないわけにはいきません。浩一さんは成人式以来、およそ35年ぶりに都内の実家に帰省することになりました。
変わり果てた父の姿…浩一さんを襲った「猛烈な後悔」
久々に降り立った実家の最寄り駅はすっかり様変わり。当時の面影はまったくありません。
どこかよそよそしい風景に自分が住んでいたころを重ね、浩一さんは少しだけ寂しい気持ちになりました。
実家に到着し、挨拶もそこそこに床の間に入ると、老いて小さくなり、横たわったまま動かない父(享年79歳)の姿がありました。
「こんな再会になるとはな……」
猛烈な後悔に襲われた浩一さんでしたが、もう後の祭りです。父親と大喧嘩して実家を飛び出し、そのまま意地になって実家に寄りつかなくなったのは自分です。
父親に向けて手を合わせながら、心の中で懺悔する浩一さんでした。
最初で最後の親孝行…浩一さんは「実家の相続」を決断
妹がすでに色々と動いてくれていたおかげで、通夜・葬儀は滞りなく終了。そして、妹から相続の話がありました。
妹「お父さんね、いつかお兄ちゃんに帰って来てもらいたい、ここの家・土地を継いでほしいんだって、最期まで言ってたのよ。だから私はなにもいらない」
父が生きていたときにはできなかった親孝行。父の最期の望みとあれば叶えたいと考えた浩一さんは、実家の土地・建物を相続することにしました。
