「配偶者の税額軽減」を“過信”していた79歳女性の末路
79歳のAさんは、3年半前に夫のBさんを亡くし、同居していた自宅(評価額約1億円)と夫名義の預金2,000万円を相続しました。その後は、わずかばかりの年金とBさんの遺産で細々と暮らしています。
また、Aさんにはひとり息子のCさんがいます。とはいえ、以前から折り合いが悪く長年ほとんど音信不通状態です。Cさんは、父であるBさんの葬儀にすら現れませんでした。
こうしたなか、夫の死から3年あまりが経ち、ようやくAさんが1人きりでの暮らしにも慣れたころ、Aさんのもとに税務署から着信がありました。聞けば、「相続税の申告がまだ確認できていないのですが、現在どのようなご状況でしょうか?」といいます。
しかし、Aさんは“とある理由”から申告が必要ないと判断し、この連絡の重要性を認識しておらず、いつの間にか対応を忘れていました。その結果、相続税の税務調査が行われることに。
税務調査官から告げられた「まさかの事実」に悲鳴
税務調査当日、Aさんの自宅には2人の調査官がやってきました。
調査官が到着するや否や、Aさんは得意げにこう言います。
Aさん「配偶者は1億6,000万円まで非課税なんでしょう? 知っていますよ。前にテレビで税理士さんが言っていたもの。この優遇制度があるから配偶者には相続税がかからないって。わざわざ来ていただいて申し訳ないけれど、夫の遺産は1億6,000万円の範囲内ですから、問題ないはずよね?」
調査官「たしかに『配偶者の税額軽減』という規定はあります。ただ、いずれにせよ相続税の申告が必要です。Aさんは今日まで申告書を提出されていませんよね」
Aさん「えっ…? 非課税なのに申告が必要なんですか!?」
「基礎控除額」を上回る場合は申告が必須
相続財産は「基礎控除額」を下回る場合、相続税の申告も納税も不要です。しかし、Aさんの相続財産は基礎控除額を上回ることから、相続税の申告が必要でした。
■Aさんの相続財産:自宅(評価額約1億円)+夫名義の預金2,000万円=合計1億2,000万円
■基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円

