(※写真はイメージです/PIXTA)

「高齢者の生活破綻」は、もはや遠い世界の出来事ではありません。特に近年、都心に高額な不動産を所有しながらも、手元の資金が底をつき、生活に困窮する「不動産貧困」に陥るケースが増えています。特に、管理費や修繕積立金など高額な維持費がかかるタワーマンションでは、そのリスクがより顕著です。一見すると裕福に見える彼らが、なぜこのような状況に追い込まれるのか。本記事では、オフィスツクル代表の内田英子氏がAさんの事例とともに、老後の持ち家リスクについて解説します。

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持ち家がリスクになる時代

「持ち家があれば安心」という考えには根強いものがありますが、いまはそういった考えを見直さなければならないタイミングにあるのかもしれません。

 

家は将来、暮らしのリスクになる可能性があります。

 

まず、不動産はたしかに資産ではありますが、現金のように自由に使えるわけではありません。「売って初めてお金になる」ものであり、所有しているだけでは生活費の足しにすることはできません。

 

3倍以上に?特に注意すべきマンションの修繕積立金

特にタワーマンションのような物件では、管理費・修繕積立金・固定資産税などが継続的に発生し、年金生活においては負担が重くなりがちです。マンションの修繕積立金の徴収方法はマンションによって異なりますが、国土交通省の調査結果によると、近年段階的に金額を引き上げる「段階増額方式」が増加しています。直近10年以内に完成したものでは、7割を超えるマンションで採用しています。

 

段階的に引き上げられることに加え、最近では物価上昇などの変化に伴い、当初の計画よりも修繕積立金額を増やす事例も増加しているようです。国土交通省の調査結果※1によると、一月あたりの修繕積立金額の平均額は当初単棟型で74.4万円、団地型で248.2万円でしたが、最終的には単棟型128.8万円、団地型で343.4万円と、3割から7割程度増加しています。

 

また、国土交通省の資料※2によれば「段階増額積立方式」を採用しているマンションの長期修繕計画では、計画の終期に大きく積立金の水準が上昇するマンションも存在するとのこと。近年分譲されたマンションをみると、長期修繕計画の計画当初から最終計画年までの増額幅の平均は約3.6倍となっており、なかには10倍を超えるものもあるようです。

 

マンションを終の棲家とする場合、見逃せないリスクといえるでしょう。

 

高齢者がタワマンに住まうリスク

さらに、家が晩年の暮らしの見えにくいリスクとなる可能性も無視できません。

 

迷子になるリスク

高層マンションの共用部分や複雑な構造は、認知能力が低下した際自身で部屋まで辿りつけなくなるかもしれないという問題があります。タワーマンションのように「均質な空間」が確保された家であるほど、視覚的な手がかりが少なく、記憶や認知機能が低下した高齢者には不向きな住環境になる可能性も考えられます。

 

緊急時の孤立リス

一人暮らしという点では、万が一のときに助けを呼べない、あるいは呼べても対応できないかもしれない、というリスクを孕んでいます。たとえば、倒れて動けなくなってしまったとき、自身で救急車を呼ぶことができても、カギを開けることができなければ、救急隊が速やかに室内へ入れない可能性もあります。この点はタワーマンションでも一戸建てでも同様です。

 

このように、「持ち家だから安心」ではなく、むしろ家が晩年の暮らしのリスクマネジメントを難しくさせるリスクとなりうる可能性があります。

 

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