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終わらない子育てと、迫りくる親の介護
60歳のAさんは、63歳の夫と35歳の息子との3人暮らしです。娘は大学卒業後、就職を機に独立し、5年前に結婚しました。一方、息子は大学卒業後、一度は就職したものの、職場の人間関係に悩み、精神的に立ち直れなくなり、退職。現在は、健康を取り戻せないまま再就職できず、家に引きこもっている状態です。「いつ立ち直れるかわからない我が子のためにも蓄えを残さねば……」そんな思いから、定年退職後も再雇用として、夫婦ともに働き続けています。
そんなAさんには、気がかりな存在がもう一人いました。実家で一人暮らしをしている87歳の実母です。Aさんが55歳のときに父が他界して以来、独居を続けてきた母。しかし、御年87歳となった母は、以前から本態性振戦の症状があり、箸やペンを持とうとすると指先が小刻みに震えてしまうことがありました。それでも日常生活に大きな支障はありませんでしたが、3年前に帯状疱疹で入院。さらに1年前には自宅で転倒し、足の指を骨折してしまいました。
身体の衰えに加え、防犯面の不安も出てきたこのごろ。最近では、「無料お試しハウスクリーニング」と称して玄関まわりの清掃をなかば押し売りのように行う業者が訪問。後日、たまたま下駄箱の上に置き忘れていた指輪と腕時計がなくなっていることに気づく、といった出来事がありました。「私の不注意だったから」 Aさんに心配をかけまいと振る舞う母でしたが、その落胆ぶりは明らかでした。
高齢者の一人暮らしは、健康面でも防犯面でもリスクが伴います。本来なら同居や近居を検討したいところですが、Aさんの家には引きこもりの息子がおり、自身もフルタイムで働いています。 現実的に同居は難しい――。悩んだ末、Aさんは母に老人ホームへの入居を勧めました。
母の収入は、父の遺族年金と自身の老齢年金を合わせて200万円(月額約17万円)です。決して少なくない金額ですが、有料老人ホームは施設の種類によって入居金や月額費用が異なり、持ち出しが必要となります。それでもAさんは、「施設費用が高くても援助を惜しまず、母が安心、快適に過ごしてもらいたい」と施設選びをしました。
