適用されれば大幅節税…「小規模宅地の特例」とは?
今回Aさんが否認された「小規模宅地の特例」は、相続した宅地の評価額を最大8割まで減額できる軽減措置です。
被相続人(亡くなった人)が自宅として使っていた土地は、残された家族にとって生活の基盤を維持するための大切な財産です。
この特例がなければ、通常の市場価値で計算された評価額がそのまま相続税の計算に適用され、相続税が高額になるために「自宅(不動産)を売却しなければ税金が支払えない」というケースも起こりえます。
こうした事態を避けるため、一定の要件を満たす宅地等については、最大80%まで評価額を下げ、相続税の負担を軽減する制度が「小規模宅地の特例」です。これにより、配偶者など残された家族がその家に住み続けられるよう配慮されています。自宅で、なおかつ330平方メートル(約100坪)までの土地であれば、最大80%の評価減が可能です。
つまり、この特例を適用できるか否かで、相続税は数百万円~数千万円と大きく変わる可能性があります。
ただし、このように税額軽減額が大きな制度であるため、適用要件も非常に厳しくなっています。
「親との同居」を軽視していたAさん
Aさんは、税理士から「小規模宅地の特例」についてアドバイスを受けた際、「自宅土地の評価額を8割も下げられるのはすごいぞ」と感激します。
しかし同時に「本当に同居するのは面倒だな」と考えました。
Aさんの職場は埼玉にあります。杉並区の実家から通うとなると、乗り換えが増え、通勤時間が延びてしまうと思ったのです。
そこでAさんは「住民票だけ自宅に動かしておけば大丈夫でしょ。税務署の人は実際に同居していたかどうかなんてわからないはず」と考えました。適用要件のひとつである「同居親族」という条件を軽視し、住民票だけを移すという行動に出たのです。
しかし、税務調査当日、調査官と次のようなやり取りがありました。
調査官「Aさんがこの家から勤務先まで行かれるには少し遠すぎるように思うのですが……。住民票を見ると、お父さまが亡くなる直前に実家に戻ってきたことになっていますが、以前住んでいた会社近くのアパートも、まだ借りられているようですね。
その部屋の光熱費はいくらでしょうか? また現在、Aさん宛の郵便物はどちらに届いていますか?」
Aさん「ええっと、それはですね……」
「住民票さえ移しておけばバレない」と思ったものの、調査官の追撃にしどろもどろ。同居の実態がないことが明らかとなりました。
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