3.金に分散することで資産を保全する
金の歴史的な分散効果と市場の混乱時におけるリスク調整後のプラスのリターンに基づいて、短期的なボラティリティを抑え、ドローダウンを制限するのに役立つ可能性があります。
しかし、金への配分は長期的な資産保全にも寄与する可能性があります。さまざまな景気循環における歴史的な長期的なリスク調整後のプラスのリターンは、予期せぬリスクや資本の損失から投資家を守り、時間の経過とともにポートフォリオの価値を損なうことを防ぐのに役立ちます(図表4)。
厚みのある流動性
⾦の流動性は資産保全の役割を果たす可能性があります。取引市場において相対的に厚みのある流動性を投資家に提供していることは、⾦を戦略的に保有する際の重要な利点といえるでしょう。歴史的に⾒て、取引額は主要な債券、通貨、株式市場と同⽔準であり、⾦の⽇次平均売買代⾦は2,320億⽶ドルを上回ると推定され、年間58兆⽶ドルに相当します※5。
そして、2020年3⽉のような市場混乱時であっても、⾦市場の流動性は維持されました。新型コロナウイルス感染拡⼤による当初のロックダウンが実施された3⽉に⾦の売買額は2,370億⽶ドルに達し※6、他の多くの資産の価値が減少するのを横⽬に、投資家は流動性のある取引市場、すなわち、キャッシュにアクセスすることができました。
※5.ワールド・ゴールド・カウンシル、ブルームバーグ、国際決済銀行(BIS)、ロンドン地金市場協会(LBMA)。データは2024年12月31日時点。LBMA、LBMA-iおよび非LBMA-iOT、ニューヨーク商品取引所(COMEX)、上海先物取引所(SHFE)、上海黄金交易所(SGE)、ロンドン金属取引所(LME)貴金属、ドバイ金・商品取引所、ICEフューチャーズ、USメタルズ、イスタンブール証券取引所、マレーシア証券取引所、モスクワ証券取引所、東京商品取引所が公表する清算データに基づく推定値。
※6.ワールド・ゴールド・カウンシル、ブルームバーグ、国際決済銀行(BIS)、ロンドン地金市場協会(LBMA)。データは2024年12月31日時点。LBMA、LBMA-iおよび非LBMA-iOT、ニューヨーク商品取引所(COMEX)、上海先物取引所(SHFE)、上海黄金交易所(SGE)、ロンドン金属取引所(LME)貴金属、ドバイ金・商品取引所、ICEフューチャーズ、USメタルズ、イスタンブール証券取引所、マレーシア証券取引所、モスクワ証券取引所、東京商品取引所が公表する清算データに基づく推定値。
歴史的価値の保存手段
⻑期的には、⾦は投資家にとって価値の保全に優れた投資⼿段であり、購買⼒を維持する役割を果たすことが期待されます。⾦はインフレ上昇時、特に極端なインフレ局⾯において、歴史的にプラスのリターンを提供することにより、物価上昇と歩調を合わせてきました※7。
さらに、⾦は⽶ドルと歴史的に負の相関性を維持することによって、通貨下落の影響をヘッジする能⼒を⽰しています※8。総合すると、⾦は、通貨下落および物価上昇に強い性格を有していることから、投資家は購買⼒を保ちつつインフレ圧⼒から資産価値を保全することができると考えられます。
※7.ブルームバーグ・ファイナンス、L.P.、ステート・ストリート。1971年8月31日~2025年3月31日の期間において、物価上昇率が年率5%超で推移したのに対し、金価格の年平均上昇率は10.6%。
※8.ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート、2025年3月31日時点。注:1995年3月から2025年3月までの週次金価格リターンと米ドル指数リターンの1年間のローリング相関は、平均して-0.42でした。相関係数は、2つの変数間の線形関係の強さと方向を測定します。これは、1つの変数がその平均からどれだけ逸脱しているかが、別の変数の平均からの逸脱とどの程度関連しているかを測定します。0は無相関、1は完全相関を示します。
長期で考える金
投資家にとって、⾦は危機時において戦術的に利⽤するだけの資産ではなく、多様な利点に着⽬した⻑期的かつ戦略的な投資対象になりえます。
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※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
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