フィリピン・貿易赤字の縮小と関税政策の影響
一方、フィリピンの貿易収支に目を向けると、4月の貿易赤字は、輸入が13ヵ月ぶりの低水準に落ち込んだことにより、過去2ヵ月で最も低い水準へと縮小しました。
4月の貿易赤字は34.9億ドルとなり、3月の45.1億ドル、前年同月の47.3億ドルから縮小しました。これは、改訂後の2月(29.7億ドルの赤字)以来、2ヵ月ぶりの小幅な赤字額です。同国の貿易収支は、2015年5月に6,495万ドルの黒字を記録して以来、約10年間にわたり赤字が続いています。
輸出は、農産物、特にココナッツオイルとその関連製品の海外出荷が大幅に増加したことで押し上げられました。その一方で、輸入は原材料とエネルギーの両方が減少し、全体の数字を押し下げました。フィリピン製品の総海外販売額は4月に前年比7%増加しましたが、3月の8.7%増からは減速し、4ヵ月ぶりの低い伸び率となりました。対照的に、商品輸入は前年比7.2%減の102.4億ドルとなり、13ヵ月ぶりの大幅な落ち込みを記録しました。
年初来4ヵ月間で見ると、輸出は9.5%増の268.7億ドル、輸入は5.6%増の427.8億ドルに達し、政府が改定した年間目標(輸出6%増、輸入5%増)を上回っています。これにより、1月から4月までの累計貿易赤字は159.1億ドルとなり、昨年同期の159.9億ドルからわずかに改善しました。
輸出成長率の鈍化は、主要市場の一部における成長モメンタムの減速が背景にあります。特に中国からの需要は停滞気味です。また、本格的な相互関税の導入を前に、米国への輸出が前倒しで行われている可能性も指摘されています。しかし、電子部品などフィリピンの主要輸出品は輸入に依存しているため、この動きは輸入増にもつながります。その意味で、現在の輸入の弱さは懸念材料であり、輸出の先行指標ともなり得ます。
4月、米国のドナルド・J・トランプ前大統領は、全貿易相手国に10%の一律関税を課しました。フィリピンに対しては17%の相互関税が課されていますが、これはASEAN加盟国のなかではシンガポールの基準税率10%に次いで2番目に低い税率です。
品目別に見ると、4月の電子製品の輸入は23.1億ドルで、そのうち半導体は9.7%増の15.9億ドルでした。一方、輸出面では、総輸出の半分を占める電子製品が4.8%減の34.1億ドル、うち半導体は6.9%減の25.7億ドルとなりました。
4月の主要な輸出先は米国(10.3億ドル、全体の15.2%)、輸入元は中国(30.1億ドル、全体の29.4%)でした。米国の関税政策を巡る不確実性から、今後数ヵ月は貿易の「大きな変動」が続くと予想されています。
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