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備えは家族で共有してこそ意味を持つ
「もっと早く、一緒にお金の話をしておけばよかった」
そう悔やむ澄子さんがそのあとに行ったのは、いまある資産の棚卸しと家計の見直しでした。私たちファイナンシャルプランナーの支援で、まず以下の3つのステップを踏むことにしました。
1. 遺族年金と生活費のギャップを可視化する
澄子さんの生活費は、月に約13万円。遺族年金では約3万5,000円不足するため、少なくとも年間42万円をなんらかの形で補填する必要があると判明しました。
2. 固定費の見直し
まずは不要なサブスクリプションを解約。通信費や電気代の契約プランも見直し、月8,000円ほどの削減に成功しました。
3. 地域包括支援センターに相談し、公的支援を確認
生活費が厳しい場合、場合によっては老齢福祉年金や生活保護などの選択肢もあります。また、家賃補助や医療費の軽減措置が受けられることも。澄子さんも、地域のケアマネジャーに相談することで配食サービス、通院支援、介護保険サービスなどをうまく利用できるようになりました。
加えて、FPとして強くお勧めしたいのが、エンディングノートの作成と、家族への資産の可視化です。保険、年金、預金、投資、借入金……。情報が分散していては、いざという時に大混乱を招きます。書類を一冊にまとめ、残された人が把握できるようにしておくことは、財産を遺すこと以上に大切な思いやりです。
澄子さんはいま、こう話します。
「夫はきっと、最後まで自分でなんとかしようと、がんばってくれてたんだと思います。でもね、私は一緒に考えたかった。弱音を吐いてくれてもよかったのに」
老後の備えとは、貯金額や年金額だけではありません。それは、情報の共有であり、信頼の可視化であり、なにより大切な人に迷惑をかけたくないという心の準備なのです。
波多 勇気
波多FP事務所
代表ファイナンシャルプランナー
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