(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦で生活していても、お互いの収入を詳しく知らない・家計状況を配偶者の一方が把握していないケースは珍しくありません。「いまのところ問題ない」と楽観視していると、「もしも」の事態に右往左往してしまうことも……。本記事では、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が、高木さん(仮名)の事例とともに家計の情報を共有することの重要性について解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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口数の少なかった夫が遺した、たったふたつの財産

「……これだけしかなかったんです」

 

兵庫県在住の高木澄子さん(仮名/67歳)は、夫を亡くした直後の心情を、静かにそう語りました。

 

亡くなった夫・誠一さん(仮名/享年69)は、無口で温厚な性格。病気ひとつしない健康体で、定年退職後も再雇用制度で65歳まで勤め上げた、真面目なサラリーマンでした。

 

「ウチの人、銀行とか税金のこと、あんまり話さなかったんですよ。『ちゃんと考えてるから大丈夫』って、いつもいっていて……」

 

そんな誠一さんが、ある日突然の心筋梗塞で帰らぬ人に。葬儀のあとの澄子さんの前に残されたのは、居間のタンスのなかから出てきた「現金78万円」と、年金事務所から届いた「遺族年金月額9万6,000円の通知書」だけでした。

 

住宅ローンは完済済みでしたが、貯金も金融資産もなく、保険の証書もみつからない。年金記録を取り寄せた結果、誠一さんの厚生年金は、退職後に再雇用で年収が下がったこともあり、遺族年金にすると月10万円を切ってしまう程度でした。

 

「これから、どうすればいいんでしょうか……」

 

涙ながらに語った澄子さんの言葉には、愛する人を失った喪失感と、目の前の現実への不安が交差していました。

平均以下の老後の備え…知らぬまま迎えた「想定外」

総務省の2023年家計調査では、60代後半の単身高齢者の支出平均は、月額約14万円。対して、澄子さんの固定的な収入は、月9.6万円の遺族年金のみです。「年金だけじゃ足りない分は、タンス預金から補填してね」と夫にいわれた記憶はあったものの、それもすぐに底をつきました。

 

さらに困ったのは、夫名義のクレジットカードと公共料金。口座残高は10万円に満たず、引き落としに耐えられる資金がない。死亡後の名義変更手続きや、年金の切替にも時間がかかり、しばらくのあいだ、澄子さんは「預金がない」「収入もない」という状態に陥りました。

 

「私が知らなかっただけで、うちは“ギリギリ”だったんですね……」

 

誠一さんは、自身の年金記録や口座の詳細、保険の有無など、一切を黙って引き受けるタイプだったそうです。よかれと思っての配慮が、逆に遺された者を困窮させる形になってしまったのです。

 

夫の不在によって初めて露呈した、家計の厳しさ。先のみえない不安と、夫に対するやるせない気持ちが重くのしかかり、澄子さんはその場で、頭の中が真っ白になるのを感じました。視界がかすみ、足元がおぼつかなくなる。一瞬、意識が遠のくような感覚に襲われ、思わず壁に手をつきました。幸い、すぐに意識を取り戻しましたが、夫が遺してくれた財産が、いかに心許ないものだったかを痛感。それが、これからの生活を根本から見直すきっかけを与えました。

 

実は、こうしたお金の全貌を知らない配偶者は決して珍しくありません。金融広報中央委員会の2022年の調査によると、夫婦のうち「相手の金融資産の内訳や金額をまったく知らない」と答えた人は全体の23.6%にのぼります。

 

 

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※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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