AI特許で日本は「周回遅れ」の衝撃…中国は米国の8.5倍、特許庁調査で判明した厳しい現実

特許庁『AI関連発明の出願状況調査(国際編)』を紐解く

AI特許で日本は「周回遅れ」の衝撃…中国は米国の8.5倍、特許庁調査で判明した厳しい現実
(※写真はイメージです/PIXTA)

AI技術の進化が加速するなか、特許出願をめぐる国際競争も熾烈さを増しています。特許庁が最新調査で明らかにしたのは、中国がAI特許出願数で米国の8.5倍という圧倒的な存在感を示し、韓国も急成長を遂げる一方、日本は出願件数や成長率で大きく後れを取っているという厳しい現実でした。世界のAI特許勢力図が大きく塗り替わるなか、日本はどのような立ち位置にあり、今後どのような戦略が求められるのでしょうか。

日本は「応用力」で勝負、しかし後れも鮮明に

日本は出願件数で中国・米国・韓国に次ぐ4位に位置しますが、件数の伸びは鈍化しています。特に自然言語処理分野では、2019年をピークに明確な減少傾向が続いています。ただし、画像処理分野では他国と異なり「映像への移行」に追従せず、医療や診断分野に特化した画像分析の取り組みが根強く続いている点は日本独自の特徴だといえるでしょう。

 

たとえば、CanonやNEC、富士通といった企業は、医療画像解析や内視鏡処理といった領域に注力しており、「AI×医療」の応用で一定のポジションを築いています。また、量子コンピューティングや組合せ最適化(解探索)といったAI周辺技術においても、日本は独自に出願件数を伸ばしており、基礎技術で劣っても応用分野で巻き返しを狙える可能性もあるのではないでしょうか。

今後の展望…国際競争と独自戦略の両立が鍵

今回の調査は、日本がAI特許戦略において「質と特色」で戦う必要性を示唆しています。中国や米国のような圧倒的な出願数を誇る国家と真っ向から競うのではなく、日本が得意とする応用技術や産業密着型のAI開発で差別化を図るべきだといえるでしょう。

 

また、今後のAI技術の主戦場となるであろう「推論」「自動操縦」「生体認証」などの分野において、大学や企業の連携、スタートアップ支援策の拡充が急務です。特許出願はあくまで氷山の一角であり、実際の事業化・実装力を高めていくためには、知財と技術戦略を一体化させる政策的な取り組みも求められます。AI技術が社会の中核インフラとなる時代、日本は「ニッチで光る技術国家」として、独自の存在感を発揮できるのか――その行方に注目が集まります。

 

[参考資料]

特許庁『AI関連発明の出願状況調査(国際編)』

 

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