(※写真はイメージです/PIXTA)

投資を始める人が増えていますが、「忙しい」「むずかしい」「プロに頼んだほうが安心な気がする」などの理由で、「お任せ運用」を選択する人が増えています。しかし、「お任せ運用」の内容をきちんと理解したうえで選択しないと、大きな後悔をすることになりかねません。FPが解説します。

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「お任せ運用」は便利で手軽で魅力的?

まとまったお金を預けて運用をお任せする仕組み、「お任せ運用」が流行っています。自分で売買の判断をする必要がないため「素人にはよくわからない」「プロにお任せしたい」と考える人にとっては魅力的です。手間がかからず手軽でよさそうに思えます。

 

お任せ運用といえる仕組みには「ラップ口座」「ファンドラップ」「ロボットアドバイザー」などが存在します。さまざまなタイプが存在しますが「丸投げできてラクそう」というイメージは一緒です。

 

さて、これらの仕組みは本当に魅力的なのでしょうか? 注意すべきことはないのでしょうか?

ラップ口座/ファンドラップ/ロボットアドバイザーの仕組み

お任せ運用の仕組みを簡単に解説します。

 

●ラップ口座 

数千万円規模のまとまった資金を預け、各種金融商品を用いて運用するサービスを専門家に任せるものです。金融商品の組み合わせや、売買のタイミングをお任せします。

 

●ファンドラップ 

数百万円規模のまとまった資金を預けて、投資信託を用いて運用するサービスを専門家に任せるものです。投資信託の組み合わせや、売買のタイミングをお任せします。ラップ口座との違いは、運用商品が投資信託に限定される点です。

 

●ロボットアドバイザー 

ファンドラップと似ていますが、お任せする相手が専門家ではなく人工知能(AI)である点が異なります。ファンドラップのようなまとまった資金は必要ありません。

 

いずれの仕組みも運用成果の保証はしてはくれませんが、投資にかかわる各種判断を専門家やAIにお任せにできるのは事実です。自分で判断するよりは運用成果が得られそうな雰囲気は漂っています。

では、「お任せされた側の利益」は…?

一見すると「便利でよさそう」に見えますが、注意点もあります。もっとも留意すべきは「手数料」の高さです。

 

いずれのお任せ運用の仕組みも、保有資産の1%程度の手数料を毎年支払うことになります。1%という数字は小さく思えるかもしれませんが、今年も、来年も、再来年も、その次の年も、さらに次の年も…と、毎年毎年「保有資産の1%程度」の手数料を支払い続けることになります。

 

このように説明すると、トータルで相当な額になることをイメージできるのではないでしょうか。これだけの手数料を支払う価値が本当にあるのか、十分に考える必要があると思います。

 

ファンドラップを例にあげると、保有する投資信託の信託報酬率に加えて、ファンドラップの手数料を余分に1%程度支払うイメージです。信託報酬率が1%程度上がったことと同等の影響を及ぼします。

 

信託報酬が運用成果にどのような影響を及ぼすかについては、記事『「低コスト」こそ正義…投資信託「投資対象同じ&コストだけ違う」商品、プロの試算で明らかになった驚きの運用結果【FPが解説】 』にくわしく記載していますが、1%の影響は非常に大きいといわざるを得ません。

 

さらに「運用を任せた相手はどうやって利益を上げるのか」という点にも注意すべきです。ファンドラップの場合、保有する投資信託ごとに手数料が決まっており、手数料は商品ごとに異なります。あなたが運用を任された専門家の立場だったら、手数料の高い商品(利益を得やすい商品)を保有したくならないでしょうか? あくまでも可能性の話ですが、筆者はその可能性はあると考えています。

 

資産を預けた人は「できる限り手数料を払いたくない」と考えますが、預けられた専門家は「できる限り手数料をもらいたい」と考える可能性があるということです。つまり「利益相反」の関係です。

 

金融機関と顧客との関係性で、利益相反ほどむずかしい問題はありません。本当に専門家を信用していいのか、非常に悩ましい問題だと思います。筆者は信用し切るのは危ないと考えています。自ら判断することが大切です。

恐ろしい…ある高齢者が保有していたファンドラップの実態

最近、ファンドラップを利用している人にお会いすることが多くなりました。ほぼ定年退職後の高齢者です。筆者がファンドラップの相談を受けた事例を1つご紹介します。

 

ある方が「高齢の両親が利用しているファンドラップについて心配がある」といって年間取引のレポートを持参しました。筆者も一瞬どう読めばいいのか迷ったのですが、よくよく内容を見ると、預かり資産の2倍以上の規模の売買を1年間で繰り返している記録があるではないですか。思わず言葉を失いました。

 

これはすさまじい取引量で、長期の運用で資産をじっくり増やす「投資の王道」とはかけ離れた姿です。

 

「時々のタイミングで最適な資産を保有するよう売買している」といえばもっともらしく聞こえるかもしれませんが、1年間で預かり資産の2倍以上の売買をする必要があるとは到底思えず、取引のレポート自体も、あえてわかりにくくしているのではないかと疑ってしまうほどです。

 

世の中は非常に順調な相場が続いている状況下でしたが、レポートに記載された運用成績は芳しくないものでした。筆者には、この取引の継続で資産が増えるイメージは持てませんでした。

 

すべての金融機関が同様だとはいいません。しかし「このような状況になるかもしれない」ことを理解していただきたいのです。「お任せ運用にはリスクがある」ということです。

IFA(独立系投資アドバイザー)にも「注意すべき点」が…

少し仕組みは異なりますが、「IFA(独立系投資アドバイザー)」という存在があります。IFA口座を作成し、IFAからアドバイスをもらって自ら売買する仕組みが一般的です。これは、上記の「お任せ運用」の仕組みと位置づけが少し違います。

 

IFA口座は、通常の口座と手数料体系が異なります。当然ながら、通常の口座よりも手数料は高額で、その追加の手数料がIFAの利益になる仕組みです。

 

投資信託を購入する場合、手数料は商品ごとに異なります。IFAが得られる手数料も、商品ごとに異なります。もしもあなたが相談に乗るIFAの立場だったら、利益を上げるために手数料の高い商品を推奨したくなりませんか? あくまでも仮の話ですが、筆者はその可能性があると考えています。ここにも「利益相反」の関係があるのです。

 

IFAのなかには、商品の取引手数料の一部を受け取るのではなく、資産額に応じた手数料を受け取る「フィー設定」をしている場合があります。この場合は、利益相反の関係性ではありません。IFAと顧客が「資産を増やそう!」と同じ方向を向いています。フィーが妥当な額かどうかは判断が必要ですが、このフィー体系のほうが安心でしょう。どうしてもIFAを利用したい場合には、フィー体系がどのようになっているか確認してください。

金融庁も注意喚起をしている「ファンドラップ」

金融庁の「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果等について(2023事務年度)」を見ると、「一部の重点先(重点的にモニタリングする金融機関)では、ファンドラップの一部のコースにおいて、コスト控除後の期待リターンを総コストが上回っている状況が見られた」という記載が出てきます。

 

わかりにくい表現ですが、簡単にいうと「コストが高すぎて損失が出る可能性が高いことが初めからわかっているファンドラップがある」ということです。このような「とんでもないファンドラップ」が、金融機関の窓口で勧められているということです。ぜひ気を付けていただきたいと思います。

 

 

小林 篤典
FP事務所 きずな 所長

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