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あなたが相談している相手はどこから利益を得ている人か?
日本では「相談にお金を払う」という考えを持つ人は多くありません。むしろ「相談は無料」が当たり前という風潮があり、日本の文化といってもいいかもしれません。
そのためか、世間には「無料相談」というものが多く存在します。金融機関の相談も無料、保険代理店の相談も無料、無料セミナー後の相談も無料…。しかし、なぜ「無料」なのでしょうか?
まず考えるべきは、あなたが相談している相手の素性です。その人はどういう立場の人で、どうやって利益を得る人なのでしょうか。あなたと無料相談をしている時間も有償で働いている時間のはずで、決してボランティアをしているわけではありません。
少し具体的に考えてみましょう。相手の立場に立って考えると見えてくるものがあります。
◆金融機関(銀行、証券会社)
もしあなたが金融商品を売ることによって利益を得る人だったら、無料相談の時間をどのように使いますか? 少しでも利益が出る商品を売りたくないでしょうか。それが営業成績につながり、給与に反映されるとしたらなおさらではないでしょうか。
つまり、金融機関の窓口で相談に乗ってくれている人は「できるだけ手数料の高い商品を売りたい」と考える可能性が高いということです。「預金では儲からないから、投資した方がいいですよ」「インフレの時代だから、投資が大事ですよ」「よくわからなければ、お任せの仕組みもありますよ」という会話となるかもしれません。これは、より手数料の高い商品や仕組みへの誘導なのです。
◆保険会社
もしもあなたが、保険商品を売ることで利益を得る人だったら、無料相談の時間をどのように使いますか? 金融機関の例とまったく同じです。少しでも利益が出る商品を売りたいはずです。
つまり「できるだけ高額な商品、儲かる商品を売りたい」「すでに手数料は回収したから、新たな保険に乗り換えてほしい」と考える可能性が高いということです。「このような心配があるでしょうから、こんな保険に入ってはどうですか?」「いまの保険よりも、こっちの保険の方がいいと思いますよ」といった会話となります。いずれも手数料獲得に向けた会話なのです。
◆住宅メーカー(住宅メーカーと連携している金融機関)
もしもあなたが、住宅ローンを組んでもらうことで利益を得る人だったら、無料相談の時間をどのように使いますか? 少しでも利益が得られるように仕向けたくはならないでしょうか。
つまり、「できるだけ高額な家を建ててほしい」「可能な限り高額なローンを組んでほしい」と考える可能性があるということです。
改めていいます。あなたが相談している相手は、あなたから「少しでも多く利益を得よう」と考えている可能性が高いのです。もちろん、なかにはそうではない人もいますから、全員があなたの財布の中身を気にしているわけでありません。しかし、これぐらい大げさに考えていたほうが、失敗の可能性は減るのです。少々疑ってかかるぐらいがちょうどいいということです。
キャッシュフロー分析は「いくらでも操作できる」
未来のお金のシミュレーションをする際に用いられるものが「キャッシュフロー分析」です。毎年の収入や支出を見積もり、将来の金融資産がどのように変動するかを分析するものです。非常に有効なツールですが、精度のよいシミュレーションをするにはスキルが必要です。これが実はなかなかのくせ者です。
せっかくキャッシュフロー分析をしてもらっても、それを読み解くスキルを持ち合わせている人は多くありませんから、結果を信じるしかありません。しかし、このキャッシュフロー分析は、分析する人によって手を加えることができてしまいます。一般の方々が気づくのは、かなりむずかしいと思います。
たとえば、顧客に高額なローンを組ませたい住宅メーカーと連携している金融機関やFPがキャッシュフロー分析をした場合、「住宅ローン金利を低めにする」「返済期間を長くする」「インフレ率を低めに設定する」「給与上昇率を高めに設定する」などにより、多額のローンが可能となる結果を導き出せます。
また、保険を売りたい保険会社の人がキャッシュフロー分析をする場合、インフレ率を高めに設定し、給与がインフレ率に劣るようにすれば、老後資金が不足する結果となり、老後不安を煽ることができるのです。「ご主人に万が一のことがあった場合、奥様の生活が不安です…。死亡保障額を上げる必要がありますね!」となるわけです。
実際、筆者のところに「保険会社には〈このままでは将来が不安〉と保険の加入を勧められ、住宅ローン相談では〈これなら高額な支払いが可能〉と契約を迫られ、どうしたらいいのかわかりません…」といって相談にくる方もいます。それほどキャッシュフロー分析には手を加えられる要素があるのです。必ずこれを頭の片隅に置いておきましょう。
筆者がキャッシュフロー分析をする際も、結果に大きな影響を及ぼす値は慎重に考えて設定します。未来を確実に予測することはできないので、いくつか条件を変えてシミュレーションすることもあります。キャッシュフロー分析は、分析者によって結果が大きく異なる可能性があるので、相談相手が信用できる人なのかどうか、その見極めが非常に重要なのです。
小林 篤典
FP事務所 きずな 所長
