フィリピン経済展望…OECDの予測と課題
フィリピンの経済成長は国内需要や公共投資に支えられ、「概ね安定的」であると、経済協力開発機構(OECD)は評価しています。しかし、世界的な貿易摩擦の影響により、政府が掲げる6〜8%の成長目標を2025年および2026年に達成するのは難しいとの見通しも示されています。OECDの最新の経済見通しによると、フィリピンの2025年の成長率は5.6%、2026年は6%と予測されています。
OECDは、堅調な労働市場と選挙関連支出が成長の主要因であると指摘する一方で、投資の伸びが過去3年間の平均を下回っていること、また堅調な輸出も今後の世界的な貿易摩擦の激化により減速する可能性を指摘しました。特にアメリカは多くの貿易相手国に対し高関税を課しており、フィリピンには17%の報復関税が適用されています(この関税は7月まで一時停止中で、10%の基本税率は継続中です)。
さらに、OECDは2025年と2026年の世界経済成長率を2.9%へ下方修正し、貿易障壁の拡大、金融引き締めの継続、信頼感の低下、政策の不確実性が成長に悪影響を及ぼすと分析しています。この影響で、海外フィリピン労働者(OFW)からの送金に影響が出る可能性があり、それが国内消費や投資に波及するリスクが指摘されています。ただし、今回の成長予測算出には送金の影響は織り込まれていません。
OECDはまた、外資直接投資(FDI)への障壁を下げるなどの改革を早急に進めることで、中期的には政府目標の成長率達成も可能であると提言しています。インフレ率は2025年に2%、2026年には3.1%に落ち着くと予測されており、物価の安定と金融緩和がその背景にあると説明されています。フィリピン中央銀行のレモロナ総裁も、インフレの鈍化を受けて年内に2回の利下げを実施する余地があると発言しています。
一方、S&Pグローバル・レーティングは、フィリピンのサービス部門は米国の関税政策の影響を受けにくいと評価しています。特にビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)などのサービス輸出は現在のところ関税の対象外であり、今後数年間はこの状態が継続するだろうと見ています。
さらに、フィリピンの主力産業である電子機器の輸出も現時点では影響を受けておらず、フィリピンがアジア太平洋地域の電子部品供給チェーンで重要な役割を担っていることが背景にあります。ホワイトハウスの発表によれば、半導体や鉱物など一部の重要品目は関税の対象外とされています。
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