(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後の「再雇用制度」は多くの企業で導入されていますが、なかには60歳で仕事を辞め、セカンドライフを満喫したいと考える人もいるでしょう。しかし、たとえ現役時代は余裕があっても、老後の資金計画には注意が必要です。安易な選択は、老後の落とし穴につながる可能性も。本記事では、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が、河合さん(仮名)の事例とともに高所得サラリーマンの老後について解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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「人生の空白期間」に備えていたか?老後設計の3つの盲点

老後破綻の主因は、資産が“尽きること”ではなく、“想定より早く尽きること”です。ファイナンシャルプランナーとして、老後資金設計の盲点を以下のように整理します。

 

1.「60〜65歳」の“年金無収入期間”の存在

年金の支給開始年齢は原則65歳。60歳でリタイアした場合、5年間は年金ゼロか大幅な収入減の状態となるでしょう。この5年間の生活費が月20万円の場合、年間240万円×5年=1,200万円の生活予備費が必要になります。河合さんもこの“空白の5年間”で800万円以上を取り崩し、想定より早く資産が減少しました。

 

2.固定費・想定外支出の見落とし

・固定資産税、マンションの修繕積立金

・本人/配偶者の医療費

・子どもの結婚援助や孫への支援

 

老後には、これらが計画外で発生することが非常に多いのです。

 

3.再雇用制度の活用を見送った代償

2024年時点、再雇用制度の導入率は約83.4%(厚労省「高年齢者雇用状況等報告」)です。 利用者の多くが「働きながら年金を増やせる」仕組みを選択しています。

 

「見栄を張って働かない道を選んだ自分に、いまは後悔しかありません」 河合さんの言葉が、再雇用を“選ばなかったことの代償”を物語っていました。

「いまからできる3つの備え」

1.年金定期便の確認と将来シミュレーション

50代になったら「ねんきんネット」で将来の受給見込額を具体的に把握しましょう。遅くとも55歳までに老後キャッシュフロー表を作成し、65歳以降の生活費・医療費を可視化することが重要です。

 

少し古いですが、日本銀行が2019年に実施した調査によると、50代の6割以上が自身が受け取れる公的年金の金額を知らないことが明らかとなっています。退職後の生活に不安を感じ、約8割の人が生活費について意識しているものの、実際に「いくら必要なのか」という具体的な金額を把握している人はわずか5割にとどまっています。さらに深刻なのは、その必要資金を具体的に確保できている人がわずか26%しかいないという現状です。

 

多くの人が老後の生活を漠然と心配しながらも、肝心な年金額や必要資金の認識、そして具体的な準備において、大きなギャップがあることが浮き彫りになっています。

 

2.再雇用・副業を“戦略的に選ぶ”

65歳までの働き方は、生活費確保だけでなく、年金受給額の増加にも直結します。2025年からは高年齢者就業促進税制も強化され、企業側の受け入れもさらに進む見通しです。

 

3.生活費のダウンサイジングは「いま」から

支出は「老後になったら減る」のではなく、「いまから減らす」ものです。家計簿アプリでの可視化や、保険・通信費の見直しを含めて「老後の支出生活」に慣れておくべきです。

老後を“自由に生きる”ために、いますべきこと

「こんなに稼いだのに、なんでいまこんな思いを……」

 

河合さんがこぼした言葉には、老後破綻の本質が込められています。老後の自由は、“収入”ではなく“準備”が生むものです。“稼ぎ終わったあと”の人生設計にこそ、もっとも真剣になるべきだと筆者は考えています。

 

まだ現役のうちに、一度ご自身の「人生設計図」を見直してみてください。その一歩が、未来の“安心”を約束する最良の選択になるはずです。

 

 

波多 勇気

波多FP事務所

代表ファイナンシャルプランナー

 

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※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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