(※写真はイメージです/PIXTA)

税理士法人松本の代表税理士松本崇宏氏によると、さまざまな個人事業主や法人の税務調査を担当した“やり手”の調査官であれば「水増しが疑われる領収書」は自然と目につくようになるため、税務調査時に不正が発覚すると指摘します。そこで、“ギリギリ5万円未満の領収書”が危険な理由をはじめ、領収書の役割と重要性のほか、税務署が警戒する「領収書を使った不正行為」の危険性をみていきましょう。

領収書とは

領収書とは、金銭のやり取りを伴う取引があったことを証明する書類です。領収書を発行する側は、商品やサービスを提供し、その対価として金銭を受け取ったことを領収書で証明します。一方、領収書を受け取る側にとって領収書は、金銭を支払ったことを証明する書類です。

 

領収書に記載が必要な事項

領収書には記載しなければならない事項があります。領収書への記載が必要な事項とは次のようなものです。

 

1.発行日……領収書を発行した年月日を記載します。

2.取引内容(品名やサービス内容)……何に対して支払ったのかを明確に記載します。

3.受領金額(税抜き・税込み)……支払った金額を正確に記載します。税抜き金額と消費税額の併記が望ましいでしょう。

4.支払者の氏名または名称……どの個人や法人が支払ったのかを記載します。

5.受領者の氏名または名称……領収書を発行した者の名前や会社名を記載します。

6.収入印紙の必要性確認……5万円以上の現金または有価証券での取引の場合は、金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。

 

また、インボイス制度のスタートにともない、適格請求書または適確簡易請求書を発行する際に記載しなければならない事項も定められています。

 

適格請求書に必要な記載事項は次のとおりです。

 

1.適格請求書発行事業者の氏名または名称、登録番号

2.取引年月日

3.取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

4.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜・税込)と適用税率

5.税率ごとに区分した消費税の額

6.書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

なぜ領収書を発行する必要があるのか

領収書には、次のような役割があります。

 

二重請求や過払いを防ぐ

前述のように、領収書は商品やサービスに対する対価を確実に受け取ったこと、また確実に支払ったことを証明する書類です。そのため、領収書を発行することで、二重請求や過払いを防ぐことが可能です。

 

もし領収書を発行しない場合、商品やサービスの提供を受けた側は、代金を支払ったことを証明できません。そのため二重に請求されても、お金を支払ったことを証明できず、再度代金を支払わなければならない事態となってしまいます。

 

したがって、領収書を発行するという行為は、二重請求や過払いを防ぐという役割を果たしているのです。

 

確定申告の際の証拠書類となる

次に、領収書は確定申告時の証拠書類としての役割も担っています。証拠書類とは、なんらかの取引があったことを証明する書類です。領収書のほか、契約書、請求書、納品書や発注書なども証拠書類に該当します。

 

確定申告では、1年間の売上と経費から所得額を算出します。課税所得額に応じて納税額は変わるため、受領した領収書は経費が正しいものであるかを示す書類としての役割を果たすのです。また、発行した領収書の控えは、売上金額が正しいものであることの証明ともなります。

 

内部不正を防ぐ

内部不正とは、組織内部の人間による不正行為のことです。領収書には、内部不正を防ぐ役割もあります。

 

たとえば、領収書がないにもかかわらず、従業員が会社に対して経費を請求した場合、その金額が正しいのか、また本当にその支出が発生していたのか、証明できるものがありません。

 

領収書がないものでも経費の請求を認めれば、実際には発生していない経費を不正に着服する可能性も生じるのです。したがって、領収書には内部不正を防ぐという重要な役割もあります。

 

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※本記事は、税理士法人松本の「税務調査ブログ」より転載したものです。

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