夫の死後の年金収入に「ここまで少ないとは」
さち子さんの夫は、厚生年金と国民年金を合わせて月14万円ほどの年金を受給していました。一方のさち子さんは、若い頃に8年ほど厚生年金に加入していたものの、その後は長年専業主婦。受け取っていた年金は月7万5,000円程度でした。
夫婦2人の年金収入は合計で月21万5,000円。贅沢こそできませんが、つつましく生活するには十分な額だったといいます。
ところが、夫が亡くなったことで生活は一変しました。年金はそのまま引き継がれるわけではありません。さち子さんが遺族年金として受け取れるのは、夫の厚生年金のうち報酬比例部分の4分の3。月額でおよそ5万5,000円強です。
さらに、遺族年金と自身の老齢厚生年金との「併給調整」により、さち子さんの年金は1万円弱カット。結果として、毎月の年金収入は12万円程度にまで減ってしまいました。
「ここまで少ないとは、想像以上でした。アパートの家賃が月6万5,000円、光熱費が1万円、食費に2万5,000円。残りはたった2万円です。国民健康保険料や介護保険料が差し引かれますし、2年に一度のアパート更新料や保険料の支払い、持病の薬代もかかります。これでは孫に何か贈る余裕もありません」
頼りにしているのは、夫が遺してくれた約500万円の貯金。ただし、それも簡単には手をつけられないといいます。
「これから10年、20年生きてしまうかもしれない。そう考えると怖くて使えません。本当に長生きしたくないです」
そして、こう後悔をにじませます。
「遺族年金が少ないという話は、60歳を過ぎた頃に聞いたことがありました。でも『もう歳だから』なんて言い訳をして、働くこともせず目をそらしてきたんです。夫が長生きしてくれれば……そんな神頼みをしていた自分が情けない。子どもには迷惑をかけたくない。そうなるかもしれないと考えると、不安でたまりません」
