簡単でお得「ふるさと納税」の落とし穴
「知らないって怖いなと思いました」
地方在住の会社員Aさん(32歳・仮名)。妻と2人暮らしで、自身の年収は約450万円。妻はパートで年収320万円ほど。将来子どもを授かる日に備えて、節約を意識しながら生活しています。
Aさんはふるさと納税を以前から利用しており、お肉や野菜、トイレットペーパーや洗剤など、生活費の節約につながる返礼品を選ぶのが定番です。
「家計がラクになるのが一番ありがたい。私も妻も、ふるさと納税はしっかり活用するようにしています」
そんなAさんが“落とし穴”にはまったのが、去年のことでした。Aさんは複数の自治体に合計4万円分のふるさと納税を行い、年末までにすべての自治体へワンストップ特例申請書をきちんと返送しました。しかし、その年は、ひとつだけ例年と違う事情がありました。医療費がかさんだのです。
「普段は絶対10万円なんていかないんですが、私が虫歯の治療でセラミックに変えて、2本で15万円くらいかかって。身体のことだから仕方ないと、泣く泣く支払いました。確定申告は面倒でしたが、医療費控除で1,000円でも戻るなら……と」
眼科や内科などの通院費用を妻の分も含めて合算。Aさんは医療費控除を受けるため、e-Taxで確定申告を行いました。確定申告を終えると、画面には還付金の目安額が表示されました。
しかし、実は落とし穴があったのです。
すっかり忘れていた、ワンストップ特例の「重大ルール」
ワンストップ特例制度とは、確定申告をしない会社員などが、ふるさと納税の寄付先を5自治体以内に抑え、所定の申請書を提出することで、確定申告をせずに住民税から自動的に控除を受けられる仕組みです。
ワンストップ特例制度は「確定申告をしない人」が前提の制度です。医療費控除など、理由を問わず確定申告をすると、その時点でワンストップ特例は自動的に使えなくなります。その場合、本来はふるさと納税の寄付額も含めて、改めて確定申告をする必要があります。
しかしAさんは、そのことをすっかり忘れていました。
「最初にふるさと納税を始めたとき、たぶん説明は見ていたと思うんです。でも“申請書を出せば終わる”のが当たり前になっていて、改めて調べなかったんですよね」
税務署から特別な連絡が来るわけでもなく、会社から注意喚起があるわけでもありません。Aさん自身も「もう手続きは終わったもの」と思い込み、そのまま月日が過ぎていきました。
違和感に気づいたのは、確定申告からしばらく経った春。会社から渡された住民税の決定通知書を見たときでした。「毎年、欄外に“寄附金税額控除額”が書かれているんですが、それがなかったんです。妻の通知書にはあって……。『申請書、届いてなかったのかな?』って焦りました」
住民税は、前年の所得や控除内容をもとに計算され、翌年6月からの税額が決まる“後払いの税金”です。 つまりこの通知書は、前年の確定申告の結果表でもあります。そこにふるさと納税の控除が載っていない。それは税務上“寄付をしていない人”として処理されていることを意味していました。
不安になったAさんが税務署に電話で問い合わせると、こう告げられました。
「確定申告をした時点で、ワンストップ特例は無効です。ふるさと納税分を含めて確定申告しない限り、控除は受けられません」
