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必ず儲かるメソッド「安く買って、高く売る」は可能か?
「安く買って、高く売ればいい。そうすれば必ず儲けられる」
投資をしていると、このような話を見聞きすることがあります。まさにその通りです。ただし問題は「実際にそれができるのか?」ということです。いまは安いのか、それとも高いのか…それをどうやって判断するのでしょう。「急激に下落している=安い」といえるのでしょうか? その後さらに下落することはないのでしょうか?
急激に上昇しているときに「いまがピークだ!」と判断して売ったとします。しかしその後、もっともっと上昇してしまうことがあります。その状況で買い直すことができるでしょうか? 自分が売った価格は記憶にしっかりと刻み込まれ、それ以上の価格で買い直すことにためらいを感じる人も多いはずです。
逆もあります。「いまが底値だ!」と思って買ったのに、さらに下がっていくケースです。さらに下がったから買い増し、それ以上に下がったからまた買い増し、それでもどんどん下がっていき…。最後は疲れて売ってしまうかもしれません。
多くの人がこのような売買によって失敗したと思い、「もうやらない」と決めて投資から離れていってしまうのです。
筆者は「予想なんてできない」と素直に諦めたほうが無難だと考えます。専門家の予想だってろくに当たらないのです。それなのに、なぜ自分の予想は当たると思えるのでしょうか。
自分で売買タイミングを決めるより、サイコロを振って決めたほうが結果がよかった…などという冗談みたいな話もあるぐらいです。
一般の投資家の売買データを調べると、安く買って高く売りたいのに、実際は「高く買ってしまい、安く売ってしまう」結果が見えてきます。「欲」という感情が論理的な行動の邪魔をしているのです。「儲けたいと思うほど失敗する」結果になっているのです。
売りどきや買いどきはわからない→では、いつ売買すれば…
「売りどきや買いどきはわからない」といわれれば「では、いつ売り買いすればいいのか?」と疑問に思われるでしょう。しかし、あまりむずかしく考える必要はありません。
あなたはいつ貯金して、いつ引き出しますか? 余裕資金があれば将来のために貯金して、使う必要が出てきたら引き出しますよね。投資もそれと同じでいいのではないでしょうか。「売りどき、買いどきはわからない」と腹を括り、「経済の成長の波に乗っているのだ」と達観できれば、おのずとやるべきことが見えてきます。
●余裕がある時期に、淡々と買う
●必要な時期に、粛々と売る
ただそれだけです。なんて簡単なのでしょう。
邪魔をするのは「少しでも多く儲けたい」と思う「欲」なのです。
売りどき、買いどきなんてわかりません。タイミングに賭ける投資は間違っています。ひたすら「経済の成長に乗っかり、長期に渡る成長の恩恵を受ける」感覚で付き合えばいいのです。強欲になれば失敗します。
「値下がり」をどうとらえるべきか?
投資をしていれば、10%ぐらいの下落にはしばしば遭遇します。しかし、なかには5%や10%の値下がりで「この世の終わり」のように騒ぐ人たちもいます。
値下がりは本当に大騒ぎするようなことなのでしょうか? それは、投資のスタンスによって異なります。たとえば、スーパーでいつも買う食品がたまたまバーゲンセールで値下げしていたら、うれしくありませんか? 味は変わらない、ただ安いだけなんて、最高ですよね。
では、たまたま今日値下がりしていた投資信託を買うことは、スーパーのバーゲンセールの食品を買うのとなにが違うのでしょう。
「この商品はいい商品だ」と思って買い続けているのですよね? その商品価値は、値下がりしたいまも変わらないのではないですか?
それなら、いまの値下がりは安く購入できるチャンスです。まだまだ積み立てていくのなら「たまたまバーゲンセールをやっている」と考え、安く買えたことを喜んではどうでしょう。
投資を始めた直後に暴落するのは悪いことではありません。むしろ「安い価格で積み立てられる大チャンス」と考えることができます。ただ、その状況に感情が耐えられなくなる人がいます。どんどん損失が増えていくからです。「バーゲンセールが続いている!」という感覚を持てれば、投資を続けられます。
大事なのは「この商品はいい商品だ」と強く思えるかどうかです。記事『コワすぎる「退職金で投資デビュー」の実情…金融機関が勧めるまま〈金融商品〉購入、毎月分配型投資信託でぬか喜び【FPの助言】』でも解説したように、「金融機関の窓口で勧められたから」という理由で購入した商品の場合は注意が必要です。その思いを持ち続けられなくなる可能性が高くなるからです。
バーゲンセールとはいったものの、いまが高いのか安いのかは、あとから振り返らなければわかりません。つまり、値上がりしようが値下がりしようが、気にせずに淡々と買っていけばいいのです。
ほとんどの人は「投資との距離感」が近すぎる
スマートフォンで簡単に確認できるからか、値動きを毎日チェックする人がいます。自分の大事なお金ですから、確認したい気持ちもわかります。
しかし、毎日値動きをチェックすることで資産が増えることはありません。当たり前ですが、チェックが値動きに影響を与えることはありえません。それがわかっていながら、一生懸命毎日チェックしてしまう…。
ただチェックするだけならいいのですが、スマホ画面を見ることで、感情が揺らぎ、神経をすり減らす人が非常に多いのです。
●そろそろ売って利益を確定したい!
●こんなに下がったら怖いから、売った方がいいのかな?
●そろそろ底だから、買った方がいいのかな?
このような心配をしたり、不安になったり。あるいは逆に、欲が出てくることもあります。その結果、余計な行動を取ってしまう人がいるのです。
そもそも、日々の値動きで一喜一憂して売買のタイミングを決めるつもりで投資を始めた人ばかりではないはず。「安く買って高く売る」のは簡単ではないのですから、できるだけ長い時間をかけて経済の成長と付き合っていけばいいのです。
つまり、毎日チェックするようなことはやめた方がいいのです。正直、1年に1回程度のチェックで十分です。投資していること自体を忘れてしまうぐらいの距離感がベストです。しかし、ほとんどの人は、投資との距離感が近すぎます。
「1年に1回のチェックでいい」と申し上げたのには意味があります。「リバランス」、つまり、値動きによる投資資金と現預金の割合の崩れを調整する目的でチェックするのです。たとえば「金融資産の40%を投資、60%を預貯金」と自分自身でルールを決めていたとしても、値動きによって「投資資金が50%、預貯金が50%」となることがあります。その場合、投資商品を売って預貯金に移すことで「投資資金が40%、預貯金が60%」という状態に戻すのです。これをリバランスといいます。適切なリスクを取り続けるように、資産のバランスを維持するのです。
リバランスは非常に大切な行動ですが、できている人を見かけることはほとんどありません。それほどむずかしいことなのかもしれません。これも「値上がりしたら…」「値下がりしたら…」などと思う感情がリバランスの邪魔をするのです。
投資の見直しどきは「想定外の事態」に陥ったとき
「淡々と積み立てし、粛々と取り崩す」ことがいいと述べましたが、人生において、それが続けられない局面が訪れることはあります。
想定外の事態が発生すれば、積み立てを止めなければならないこともあるでしょうし、大きな額を取り崩さなければならなくなることもあるでしょう。そのようなときは、躊躇してはいけません。思い切って見直してください。
お金が必要になったときに、投資資金を取り崩さず預貯金だけを取り崩す人がいますが、それをしてはダメです。「値動きのある資産」の割合が想定以上に増えることになりかねず、万一暴落するようなことになったら大変です。リスクを考え、バランスよく全体を取り崩すことが大切です。
投資の見直しどきは「想定外のことが起こったとき」です。それ以外は、計画どおりに淡々と積み上げ、粛々と取り崩していきましょう。決して「大きく値上がりしたから」「大きく値下がりしたから」という理由で方針を変えないこと。これが筆者からの切実なアドバイスです。
小林 篤典
FP事務所 きずな 所長