老人ホーム費用が「贈与」とみなされる境界線
実際、老人ホームの費用を本人ではなく家族が支払うというケースは少なくありません。民法や税務上、配偶者や直系血族、兄弟姉妹同士はお互いに扶養の義務があります。そのため、日々の生活に必要な費用を支払っても、通常贈与税の対象とはなりません。
また、相続税法第21条の3においても、扶養義務者間で生活費や教育費として贈与された財産のうち、通常必要と認められる範囲であれば贈与税は課されないと定められています。
ただし、ここで重要なのが「通常必要と認められるかどうか」という点です。この基準を満たす場合には、上記のとおり贈与税はかかりません。では、「通常必要と認められる範囲」とは、どのようなものを指すのでしょうか。
これは法文上に明確な記載があるわけではなく、生活レベルや事情に個人差があるため、一律に定めることはできません。今回のように老人ホームの入居費用が問題となる場合も、さまざまな事情が加味されます。
入居一時金が相続税を増やす?高級老人ホームの落とし穴
たとえば、入居者の年齢や介護の必要性、施設の設備内容なども重要な判断材料になります。
今回Aさんが入居したのは、1億円という高額な費用がかかる高級老人ホームでした。同じく高額な費用でも、それが「通常必要」と認められる内容であれば非課税ですが、そうでないとみなされた場合は課税対象になります。今回は後者と判断され、指摘を受けたというわけです。
では、いったいいくらであれば通常と認められる範囲にあたるのでしょうか。過去の事例をみると、平成22年11月19日の裁決において、入居金945万円は非課税とされました。一方、平成23年6月10日の裁決において、1億3,370万円の入居金は課税対象とされています。
もちろん、入居者の介護状態や居室の広さ、設備の内容、さらには贈与を受ける側の経済状況なども加味され、最終的には社会通念に基づいて判断されます。
なお、この入居費用ですが、具体的には入居に際してまとめて支払う一時金のことであり、入居してからの家賃相当額や老人ホーム自体の修繕や建設費用に充てられる部分、そして居室部分や施設を利用するための権利金としての性質を持っています。前払いとしての性質もあるため、当初の想定より短い入居期間であった場合には、返還されることもあります。
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