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非労働力人口の減少と若年層の完全失業率低下
もう一つの注目したいのが、非労働力人口の大幅な減少です。2025年4月時点の非労働力人口は3,979万人と、前年同月比で66万人の減少となりました。高齢者の再就労や女性の社会進出が進んだ結果と見られ、労働市場の裾野が着実に広がっていることを示しています。
完全失業者数は188万人で、前年同月から5万人減。とりわけ、若年層(15~24歳)や中堅層(25~44歳)の男性で顕著な減少が見られました。失業理由別では、「自発的な離職」が4万人減と大きく改善している一方で、「勤め先や事業の都合による離職」は2万人増加。これは一部の業種で再編や事業縮小が進んでいることを示唆しており、雇用の安定性には課題が残ります。
確かに、雇用の「量」については回復が続いていることは明確です。しかし、今後の課題として浮かび上がるのは「雇用の質」や「労働生産性」の向上といえるでしょう。今回の調査では、製造業や建設業など、日本の基幹産業における就業者数が前年同月比で減少していることがわかりました(製造業:▲1.6%、建設業:▲3.8%)。特に建設業の人材不足は深刻で、インフラ整備や防災計画の実行に支障をきたす恐れもあります。
一方で、情報通信業や不動産業などでは緩やかな増加傾向が見られました。テレワークの普及や都市再開発など、ポストコロナの新たな経済構造が労働市場に影響を及ぼしつつあるともいえるでしょう。
今後は、業種間の労働移動の円滑化、スキルアップ支援、女性・高齢者のキャリア形成支援といった総合的な政策が求められます。
このように、2025年4月の労働統計からは、量的な雇用回復とともに、社会全体としての「働く力」の裾野が拡大していることが明らかになりました。女性や高齢者、サービス業中心の雇用増加がその主な要因です。
しかし、伝統的な基幹産業の人手不足や、非正規雇用の割合に大きな変化がないことは、日本経済の構造的な課題を改めて浮き彫りにします。技術革新や社会変化に対応した「持続可能な労働市場」の構築には、さらなる政策的な後押しと企業の柔軟な対応が不可欠です。この安定の波を次なる成長の基盤とするためには、政府・企業・労働者がそれぞれの立場から課題に向き合い、新たな雇用の質と形を模索していくことが求められます。
[参考資料]
