(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の中小企業は今、売上減少やコスト高騰、価格転嫁の難しさ、さらには国際情勢の不安定化という「四重苦」に直面しています。大企業との格差が広がるなか、現場の経営者たちは「もう、やってられない」と悲鳴を上げています。

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    容赦ない「トリプルパンチ」…売上、採算、そして値上げの壁

    「もう、やってらんないですよ。正直、いつまで持ちますかね、この状況で――」。

     

    都内で長年、アパレル製造業を営む山田社長(仮名・50代)は、疲弊しきった顔でそう語ります。その言葉は、今、多くの日本の中小企業経営者が胸に抱く、偽らざる本音です。2025年春、日本の中小企業を取り巻く環境は、かつてないほどに厳しさをましています。

     

    日本政策金融公庫が発表した『全国小企業月次動向調査(2025年4月実績・5月見通し)』の数字は、その厳しい現実を如実に示しています。2025年4月の売上DI(業況判断指数)は▲12.3と、前月より6.0ポイントも大幅に悪化。さらに5月の見通しは▲15.6**と、マイナス幅が拡大する一方です。

     

    「コロナ禍が明けて持ち直すかと思いました。でも、結局は消費者の財布の紐が固いままで、売上は伸び悩むばかり。特にウチみたいなアパレルは節約志向にシフトしてるから直撃ですよ」と山田社長は嘆きます。

     

    調査結果は、小売業の厳しさを裏付けています。耐久消費財・非耐久消費財ともに大幅な低下が見られ、5月には▲24.2という極めて厳しい水準が予測されているのです。これは、コロナ禍後の需要回復が一巡し、消費者の節約志向が再び強まっていることを反映しているとみられます。

     

    売上の減少は、もちろん収益にも直結します。4月の採算DIは▲3.9と、3月から5.8ポイントも低下し、黒字企業より赤字企業が多い状態に陥りました。「うちは本当、綱渡りですよ。毎月、資材費の高騰と人件費の上昇で、利益がどんどん目減りしていくんです」と山田社長は肩を落とします。

    「値上げは死」…価格転嫁できない中小企業の悲哀

    本来ならば、原材料費や人件費の高騰に対応するためには、販売価格に転嫁するのが筋です。実際、直近半年間で販売価格を「引き上げた」企業は48.7%、「今後引き上げる」企業も46.3%と、半数近くの企業が価格改定に取り組んでいます。しかし、それができる中小企業ばかりではないのが現実です。

     

    「値上げなんて、考えられないですよ」

     

    都内で食品小売業を営む田中社長(仮名・40代)は語気を強めます。

     

    「うちは地域密着でやってるから、常連さんの反応が心配で。たった数十円の値上げでも『高くなったね』と言われる。結局、うちが全部かぶるしかないんです」

     

    調査でも「地元顧客の反応が心配で値上げできない」「価格交渉が困難」といった声が多数報告されており、特に中小・零細事業者においては、市場価格との兼ね合いが最大の制約要因となっているのです。つまり、中小企業は「コストは上がるのに、値上げはできない」という、まさに八方塞がりの状況に置かれているのです。これは、大企業がサプライヤーにコスト削減を要求し、そのしわ寄せが中小企業に集中するという、日本社会に根深く残る「搾取構造」の一端ともいえるでしょう。

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