(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年の日本の不動産市場は、再び転換期を迎えています。都市部を中心とした価格上昇は続くものの、成約件数や投資動向には冷静さも見られ、需給の構造的変化が浮き彫りとなりました。国土交通省の『令和7年版 土地白書』に示されたデータを基に、市場の今を読み解きます。

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    新たな資金が向かう先…ESGと地方再生

    2024年の市場では、「ESG投資」も重要なキーワードの一つです。政府はESG改修や耐震・環境性能に優れた建物への投資促進を進めており、東京や大阪といった都市部では中小ビルの改修・再生が次なる投資対象として注目されています。

     

    さらに、人口減少が進む地方都市への投資も無視できません。不動産証券化を通じたインフラ・データセンター等の新規アセット整備が検討されており、地域経済への資金供給と同時に、都市圏との収益格差の是正が期待されています。

     

    国交省は、令和12年までにリート等の資産総額を約40兆円にまで拡大するという中長期目標を掲げていますが、その達成には市場の多様化と制度の柔軟化が不可欠です。

    高まる外部環境リスクへの備え

    不動産市場は、今後も多くの外部リスクに晒される可能性があります。世界的な金利動向、地政学リスク、インフレ圧力、そして国内の少子高齢化。これら複合的要因が投資判断を難しくしており、J-REIT指数の変動も2024年を通して1,700ポイント前後で不安定な動きを見せました。

     

    同時に、銀行などの金融機関による不動産業向け融資残高は、2024年には過去最高の106.7兆円を突破しており、信用リスクへの警戒も必要な局面です。不動産投資に過度な資金が流入することによる市場過熱と、その反動としての価格調整リスクは、2008年の金融危機の教訓を想起させます。

     

    不動産市場と不動産投資市場は、密接に関係しながらも異なるロジックで動きます。実需の弱まりが投資市場に波及するまでにはラグがあるものの、需給バランスが中長期的に崩れれば、資産価値の調整は避けられません。

     

    これからの不動産経済は、単なる地価や利回りでは測れない複雑な局面に突入しています。市場関係者には、透明性の確保と共に、投資判断において生活者視点や地域ニーズを取り入れる柔軟性が求められる時代となるでしょう。

     

    [参考資料]

    国土交通省『令和7年版 土地白書』

     

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