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首都圏と地方都市で異なる上昇メカニズム
地価上昇の先頭を走るのは、やはり三大都市圏。東京圏、大阪圏、名古屋圏はいずれも4年連続で上昇し、その幅も拡大傾向にあります。特に東京圏では、住宅地で前年比5.2%、商業地では8.2%と目立った伸びをみせています。大阪圏もこれに続き、再開発やオフィス需要の回復が地価を押し上げました。
地方圏においても上昇傾向は続くが、札幌市・仙台市・広島市・福岡市のいわゆる「地方四市」では上昇幅がやや縮小しました。これは、新型コロナによる都市圏からの人口移動が一巡し、需給バランスが調整局面にあることを示しています。それ以外の地方都市ではリゾート地の需要や工場進出などを背景に、地価の堅調な伸びが確認されています。
カテゴリー別にみていくと、地価のなかでも特に回復が鮮明なのが商業地です。観光需要の回復に加え、ホテルや店舗、さらには駅前の再開発プロジェクトが進行中の都市では、収益性向上への期待が地価を押し上げる要因となっています。
たとえば、京都や金沢といった歴史的観光地では、インバウンドの再来により地価が顕著に上昇。再開発の効果が大きい東京都心や横浜、大阪の梅田周辺などでは、マンション需要との競合が激化し、用途混在エリアの価値も上昇しています。
このように、商業地の地価上昇は単に景気の回復による一過性のものではなく、中長期的な都市構造の変化や消費者動向の転換が背景にあると考えられます。
物流・半導体需要も押し上げ要因に
もうひとつ注目すべき動きは、工業地の地価上昇です。特に半導体関連工場が立地する地域では、関連企業のオフィスや従業員の住宅需要が発生し、地域全体の不動産需要を底上げしています。
また、eコマースの拡大を受けて、物流拠点となる郊外の工業地に対する投資も進んでいます。高速道路へのアクセスや労働力の確保が容易な地域では、土地需要が継続的に高まり地価は上昇。これらの要因は、都市部に比べて地価の変動が緩やかだった地域にとって、重要な起爆剤となっています。
ただ上昇一辺倒ではありません。令和6年に発生した能登半島地震など、自然災害による影響も。被災地域では、地価が大幅に下落した地点もあり、リスクの現実化が不動産市場に与える影響の大きさが改めて浮き彫りになりました。今後、このような地震リスクへの備えや、災害に強い都市計画が一層求められることになるでしょう。
