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資金の流れが変わる不動産投資市場
2023年の不動産市場全体は、地価上昇を背景に堅調さを維持しましたが、成約件数や販売量は頭打ちの様相を呈しています。不動産価格指数(住宅)や既存住宅販売量指数によれば、価格上昇にもかかわらず販売量は鈍化しており、買い手側の慎重な姿勢が読み取れます。
また、法人の不動産取引量も前年に比べやや減少しています。これは金利の先行き不透明感や建設コストの上昇、そして人口動態を踏まえた将来需要への警戒感が影響していると考えられます。
一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)による不動産流通の効率化は進展しました。宅地建物取引業法の改正を機に書面の電子化が促進され、不動産取引のオンライン化が実現。加えて、不動産ID(建物ID)の試験導入や「安心R住宅」制度の普及も、既存住宅流通の透明化と信頼性向上に寄与しています。
不動産投資市場に目を転じると、注目すべきは証券化市場、すなわちリート(J-REIT)をはじめとする不動産金融商品の動向です。2024年末時点で、上場リートの銘柄数は57、時価総額は約14.3兆円に達しています。主な投資対象としては、事務所(27.3%)、倉庫(20.7%)、住宅(20.6%)などが挙げられ、物流施設や住居系の安定資産への需要が際立っています。
さらに、投資部門別のJリート売買では海外投資家が購入の69.0%を占めるなど、その存在感は増す一方です。為替レートや金融政策の影響を受けやすい構造となっており、海外資本の動向が今後の市場全体に強い影響を与えることは明らか。また、不動産特定共同事業、いわゆるクラウドファンディング型投資も拡大傾向にあります。令和5年度には新規組成件数が701件、出資額は3,087億円と過去最高を記録。なかでも電子取引を活用した案件は530件、出資額1,008億円と堅調で、少額投資による参加の裾野が広がっています。
